6 / 72

第6話 出会い

 網埼家へ着くと、愛香はまだ短大で不在だったが、彼女から志水のことを聞いていた母親から丁寧に挨拶をされ、二階にある智流の部屋へとさっそく向かった。  ノックをすると、小さな返事とともにドアが開かれた。  智流を一目見た瞬間、志水の感じていた不安は消え去り、彼に目を奪われてしまった。  愛香の話の通り、智流は姉そっくりの美貌の持ち主だった。大きなアーモンド・アイが印象的な小さな白い顔は、姉の愛香をそのまま幼くしたようだった。  それなのに、二人の姉弟から受ける印象はまったく違っていた。  愛香がいかにも勝気そうなのに比べて、智流はどこか自信無げで儚さを感じさせる。  なんていうか守ってあげたくなるような……。  オレはこの子の方が好みかも……。  目の前の美少年を見つめ、志水はそんなことを考えていた。そして次の瞬間、我に返る。  ……って、相手は男の子だってーの。オレはいったいなにを考えてるんだ……?  志水は気を取り直して、なるべく優しく見える笑顔を浮かべて、智流に話しかけた。 「初めまして。智流くんだよね? えーと、お姉さんから話は聞いてるのかな?」 「はい。あの、どうぞ……」  智流は小さな声でそう言うと、ドアを大きく開いて、志水を部屋の中へと入れてくれた。  綺麗に整頓されている部屋の真ん中に、小さなテーブルがあり、二人は向かい合って座った。  程なく彼の母親が紅茶を持ってきて、すぐに出て行く。  なんとも緊張感に彩られた沈黙が二人の上に降りてきた。  志水はその沈黙を蹴散らして、智流に自己紹介をした。 「志水三起也です。これから月・水・金の夕方二時間、君に物理と英語を教えることになりました。よろしく」

ともだちにシェアしよう!