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第6話 出会い
網埼家へ着くと、愛香はまだ短大で不在だったが、彼女から志水のことを聞いていた母親から丁寧に挨拶をされ、二階にある智流の部屋へとさっそく向かった。
ノックをすると、小さな返事とともにドアが開かれた。
智流を一目見た瞬間、志水の感じていた不安は消え去り、彼に目を奪われてしまった。
愛香の話の通り、智流は姉そっくりの美貌の持ち主だった。大きなアーモンド・アイが印象的な小さな白い顔は、姉の愛香をそのまま幼くしたようだった。
それなのに、二人の姉弟から受ける印象はまったく違っていた。
愛香がいかにも勝気そうなのに比べて、智流はどこか自信無げで儚さを感じさせる。
なんていうか守ってあげたくなるような……。
オレはこの子の方が好みかも……。
目の前の美少年を見つめ、志水はそんなことを考えていた。そして次の瞬間、我に返る。
……って、相手は男の子だってーの。オレはいったいなにを考えてるんだ……?
志水は気を取り直して、なるべく優しく見える笑顔を浮かべて、智流に話しかけた。
「初めまして。智流くんだよね? えーと、お姉さんから話は聞いてるのかな?」
「はい。あの、どうぞ……」
智流は小さな声でそう言うと、ドアを大きく開いて、志水を部屋の中へと入れてくれた。
綺麗に整頓されている部屋の真ん中に、小さなテーブルがあり、二人は向かい合って座った。
程なく彼の母親が紅茶を持ってきて、すぐに出て行く。
なんとも緊張感に彩られた沈黙が二人の上に降りてきた。
志水はその沈黙を蹴散らして、智流に自己紹介をした。
「志水三起也です。これから月・水・金の夕方二時間、君に物理と英語を教えることになりました。よろしく」
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