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第9話 確かな恋心へ

 智流の家族からは、勉強よりも彼の悩みを聞きだして欲しいと言われている。……とはいえ、そんなに簡単に行くものではない。  とりあえず志水は二時間のうち一時間半は勉強に費やし、残りの三十分を雑談に興じることで、智流との距離を縮めていくことにした。  二人はミステリーとホラー小説好きという共通点があるので、勉強はしばしば脱線して、好きな小説について語り合う、ということも多かった。  最初のほうは志水に対して少し人見知りをしているようだった智流も、笑顔を見せてくれることが多くなってきた。  志水は智流に対して抱く自分の思いについて、すごく悩んだ。  弟のような存在として、かわいく思うということを、淡い恋心と間違っていないか。  ――答ははっきりと出た。……オレは確かに智流に恋心を抱いてる。  同性に恋することへの禁忌感を乗り越えられるのか。  ――好きという思いが大きくなるにつれ、禁忌感などなくなっていった。  結局は叶わない可能性が高い恋だ。自分の気持ちを智流へ押し付けないでいれるか。  ――こればかりは、はっきりとした答を出せないでいる。  その恵まれた容姿ゆえに求められるばかりだった志水。そんな志水が、初めて求める側になった。できることなら相思相愛になりたいのが本音である。ただ、智流を傷つけるのだけは嫌だった。だから……。  そして、あっという間にひと月が過ぎ、智流はずいぶん明るくなり、志水に心を開いてくれるようになった。

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