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第13話 屈託の原因③

 智流の部屋へ戻ると、彼は唇を噛みしめ、体を強張らせて椅子に座っていた。 「大丈夫か? 智流くん」  志水が声をかけると、智流は縋りつくように志水のTシャツを握りしめてきた。  なにかを言いたいのだが、言うことができない……そんな気持ちが彼からヒシヒシと伝わってくる。  志水は智流の細い肩を抱き寄せ、安心させるように囁いた。 「いいんだよ、智流くん……、焦らなくても。オレはいつだって君の味方だからね」  智流は大きな瞳にうっすらと涙をにじませ、小さくうなずいた。  それほどひどいいじめを智流は受けていたのだろうか?  いったいいじめの理由はなんだというのか。  考えられるのは、彼の卓越した美貌を妬んで、ということだろうか。それともなんの理由もなくいじめがはびこっているのか。……分からない。  志水にとって智流はとても大切な存在である。一刻でも早く彼を救ってあげたいけれど……。  今は智流が心の中の屈託を話してくれるのを待つしかなくて……。  志水は無力な自分を情けなく思った。  その日の智流はずっと憂い顔が消えなかった。  勉強が終わり、雑談をしていても、いつもの笑顔を見せてはくれなかった。

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