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第20話 危機
智流が通話ボタンを押し、
「はい」
応答すると、男性は段ボール箱をカメラの前にかかげて言った。
〈**宅配便です。網埼知良 さんに荷物が届いてます〉
「あ、はい……」
知良は父親の名前だ。
智流は少し迷ったが、このまま出ないで、再配達してもらうのは宅配業社の人に迷惑だと思い、玄関へ向かった。
ドアチェーンを外し、鍵を開けると、智流はドアを外側に少しだけ開く。
すると、次の瞬間、宅配業社の男性の手がドアをつかみ、大きく外側に開け放った。
「え……?」
智流が茫然としているうちにも、宅配の男性は家の中へとずかずか入ってくる。
「えっ……? なに……?」
あっという間の出来事に、智流はまだ混乱していた。
宅配業社の男性は持っていた段ボール箱を投げ捨てる。コンクリートの上に落ちたのにもかかわらず、段ボール箱はカサッと小さな音をたてただけだった。中は空のようだ。
ここにきてようやく智流の中で、警戒音が鳴り始める。
情けないくらいに自分が鈍く、無防備であったことに気付いたが、もう遅い。
男は目深にかぶっていた宅配業社の帽子をゆっくりと脱いだ。
智流の心が恐怖で凍り付く。
「やあ、久しぶりに会えたね、智流。ネットで高い金を出して、この制服を手に入れた甲斐があったよ」
そう言って、にやりと厭な笑いを浮かべた男は、副担任のマスダだった。
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