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第21話 助けを求める声

 同じ頃、志水は自宅マンションで、翌日の智流の勉強用のプリントを作っていた。  一段落ついて、志水がコーヒーでも飲もうかと思ったとき、ジーンズのポケットに入れてあったスマートホンが着信メロディを響かせた。  見ると智流からだ。  なぜか胸騒ぎのようなものを感じながら、志水が通話キーをタッチすると、 《志水先生っ……助けてっ……!!》  いきなり智流の悲痛な声が聞こえてきた。 「智流くん!? いったいどうした――」 《あいつがっ……宅配の人の格好をしてっ……、だから僕、鍵を開けちゃって……! 家に、あいつが、入ってきたっ……》  智流は完全にパニックに陥っていて、言葉にまとまりがなかったが、あいつというのは、副担任のマスダのことだろう。  どうやらマスダが宅配の人間を装い、鍵を開けさせ、彼の家の中へ入り込んだらしい。  志水の体に戦慄が走る。 「すぐに行くから! 智流っ。今、君はどこにいるんだ!?」  志水は車のキーをつかむと、慌てて部屋から飛び出した。 《トイレの中っ……、鍵をかけて……ひっ!》  智流の声の上、ドンッとなにかを強く叩いたような音が被さった。  智流が逃げ込んだトイレのドアを、マスダが叩くか蹴るかしているようだ。下手をすればドアが壊されてしまうかもしれない。  志水は近くにある駐車場にとめてある車に乗り込んだ。 「今、君の家に向かってるから、このまま電話を切らないで!!」

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