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第24話 救出
智流はガクガク震え、四つん這いになりながら、トイレから這い出した。
「智流っ……!」
途端に志水に強く抱きしめられた。
「大丈夫か? 智流?」
「うん……うん……」
志水の細いが、ほどよく筋肉がついた腕の中で守られたまま、智流は何度もうなずいた。
廊下では志水に殴られたマスダが、みっともなくひっくり返ったまま、くやしそうに唸り声をあげていた。
「貴様……、こんな暴力をふるいやがって。許されると思ってるのか! 訴えてやるからなっ!!」
敗者の遠吠えに、志水は冷たく鋭い一瞥をくれてから言い捨てた。
「訴えられるのはあんたのほうだ。自分がなにやったのか分かってないのかよ? 生徒へのストーカー行為、住居不法侵入、器物破損……完全な犯罪行為だろ」
「――――」
マスダが絶句し、みるみる青ざめていく。
志水が智流へ訊ねてきた。
「智流、警察を呼んでもいいか?」
「はい。お願いします……。それから両親と姉にもすべて話します。……志水先生、一緒にいてくれますか?」
志水は智流の頭を優しくなでてから、力強くうなずいてくれた。
そのあとはほんとうに慌ただしかった。
マスダは警察へ連行されていき、智流は両親と姉へ電話をかけ、とにかくすぐに帰って来てくれるように頼んだ。
智流の声が切迫していたせいか、三人とも飛んで帰って来てくれた。
そして智流は不登校の原因になった出来事と、この日に起きたことをすべて話した。
志水がずっと隣にいてくれ、智流が上手く伝えられないところは彼が補足してくれた。
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