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第27話 救ってくれた人
「よし。できた」
智流は綺麗に盛られたポテトサラダに満足そうな笑みを浮かべ、呟く。
この日の三時間目の授業は、家庭科の調理実習だった。
メニューはポテトサラダ。
すりつぶしたじゃがいもに、キュウリやニンジンなど鮮やかな色彩の野菜を混ぜ、我ながら美味しそうにできあがった。
同じ班で料理を作った、親友の高安信行 がさっそく割り箸を袋から出している。
「うまそー。オレ、ジャガイモって大好きなんだよねー。早く食おうぜ、智流」
午前中の調理実習は、食欲旺盛の高校生にとってはなにより試食が楽しみだ。
美味しそうな匂いの漂う調理室に、おなかもクゥと音を立てる。
「ごめん。ちょっと待って、信行。写真撮るから」
智流はそう言うと、制服のポケットからスマートホンを取りだし、写真を何枚か撮った。
あとで志水へメールを送るとき、添付するのだ。
本当はできあがった料理をタッパーにでも詰めて持ち帰り、志水に食べてもらいたいのだが、秋とはいえ日中はまだまだ気温も高く、いたんでしまうおそれがある。
それに今日は火曜になので、志水が家庭教師に来る日ではない。
そのことに寂しさを感じていると、ポテトサラダをほおばった高安が話しかけてきた。
「ポテトサラダの写真、志水さんへ送るのか?」
「うん、まあ」
調理実習で作った料理の写真を志水へ送るのは初めてではない。出来が良かったときはいつも写真に撮り、彼へのメールへ添付している。
「智流、ほんとに志水さんになついてるよなー。まあ、その気持ちもよく分かるけど。あの人、かっこいいし。なんてったって、智流がまたこうして学校へ来れるようになったのも志水さんのおかけだもんな」
「うん……」
智流はポテトサラダを口に運びながら、うなずく。……そう、智流がなんの不安もなく登校を再開できるようになったのは、志水のおかげだった。
――高校生活にも少し慣れてきた初夏、智流は副担任の男性に襲われそうになった。
そしてその次の日から、学校へ行くことができなくなってしまったのだった。
不登校……姉や両親はその原因をいじめだと思っていたようである。
智流のほうも同性にいやらしいことをされたと、本当のことを家族には言えないまま日にちが過ぎていった。
そんな最低の精神状態にいる智流のところへ、姉が連れてきたのだ志水だった。
初めて会ったときは、思わず見惚れてしまった。
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