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第28話 好きという気持ち
すらりとした長身に端整な顔立ち。志水はテレビかファッション雑誌から出てきたような垢抜けた美青年だった。
整い過ぎて、いっそ冷たく見える美貌と裏腹に志水はとても優しい。
教え方がうまく家庭教師としても頼りになるが、なにより智流が楽しいのは、彼とする他愛のないおしゃべり……二人ともホラーやミステリー小説が好きなので、勉強をしばしば脱線して、時間を忘れて話に花を咲かす。
初めの頃は、もしお兄ちゃんがいたら、こんな感じなのかな、と思っていた。でも。
いつからだろう、その思いが変化していったのは……。
「おい、智流、食わないのか?」
隣席の高安に肘で突かれて、智流はハッと物思いから覚めた。
「あっ、うん。食べる」
「いっつも志水さんのことばっか考えてるんだもんなー、智流は」
「えっ?」
突然の指摘に、智流が高安を見れば、ニヤニヤ笑いながら見返された。
「べ、別に、そんなことない……」
言葉ではそう言っても、うわずる声と上気した頬がそれを裏切る。
高安は童話に出てくる猫みたいな笑顔を浮かべつつ、ズバッと切り込んできた。
「智流、志水さんのこと好きなんだろ?」
「えっ? そ、そりゃ好きだよ、優しいし、かっこいいし。お、お兄ちゃんができたみたいで……」
「そうじゃなくってー。恋しちゃってるだろって言いたいんだよ、オレは」
「ま、ま、ま、まさか。し、し、志水さんは、お、男だよ?」
智流は真っ赤になりながら否定したが、高安はそういうことには偏見がないようだった。
「別に関係ないんじゃね? 志水さんくらいかっこよかったら、同性の目から見ても魅力的に映ってもしかたないし。それにあの人、智流の危機を救ってくれたんだろ? まさに正義のヒーロー、智流の王子様じゃん。……使い古された言葉だけど、好きになった人が志水さんで、たまたま志水さんは同性だった、でいいんじゃないの? 難しく考えなくても」
「……でも、志水さんはお姉ちゃんの彼氏だから」
そう口にした瞬間、自分で思ってた以上に胸が痛んだ。
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