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第30話 すれ違う思い②
午後の大学のカフェテリアで、志水は智流からのメールを開いた。
〈今日の三時間目は調理実習。ポテトサラダを作りました。けっこう上手にできてうれしい!〉
そんな文章とともに写真が添付されている。彼が作ったというポテトサラダの写真だ。
志水はスマートホンの画像に愛しげに触れると、憂いに満ちた溜息を零した。
「なーに、溜息なんかついちゃってるんだー? 志水」
声をかけられ、振り返ると、友人の小野和夫がコーヒーを乗せたトレイを手に立っている。
「なんだ、小野か」
思えば、こいつに参加してほしいと頼み込まれた合コンで、愛香に会い、それがきっかけで彼女に相談を持ちかけられ、智流と出会ったんだっけ。
「なに? それ、なんの写真? ……料理?」
小野は志水の向かいに座ると、スマートホンを覗き込んできた。
「ちょー、おまえ、勝手に人のスマホ見るなよ」
志水が素早くスマートホンをポケットへしまうと、小野は不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「ふうん……、やっぱりね」
「なんだよ?」
「やっぱり付き合ってるんだ、志水、彼女と」
「は?」
言われた意味が分からず、志水はきょとんとする。
「今更隠すなよ、志水。いつだったかの合コンで、おまえ、お持ち帰りしたじゃん。弥都女の超美人、網埼愛香ちゃん」
「……ああ」
そういうことか、と志水は思う。見当違いもいいところだが、周りから見れば、そのように映ったとしてもしかたがない。
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