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第38話 沈む気持ち

 翌日の日曜日、智流は寝不足でふらつく体を引きずるようにして、高安との待ち合わせ場所へ出かけた。  あいにくの曇天で、まだ午前中だというのに薄暗い。今の智流の気持ちのようだ。  待ち合わせ場所の駅前へ五分ほど遅れてやって来た高安は、智流の顔を一目見るなり心配そうに眉をひそめた。 「どうした? 智流、顔色悪いぞ?」 「え? ……あ、うん。ちょっと寝不足気味で」 「大丈夫なのか?」  高安が心配げに聞いてくる。 「大丈夫だよ。早く行こ」  智流は強がって笑って見せた。  電車に乗り、賑やかな歓楽街がある駅に向かい、その駅から歩いてすぐのところにあるシネコンへ足を運ぶ。  シネコンは混んでいた。  今にも泣きだしそうな天気だというのに、いや、だからこそなのか、ずらりと長い列ができていた。  列に並んでいるうちに、智流の気持ちはどんどん沈んでいった。  もともと人が多くいる場所は苦手なこともあり、とてもじゃないが映画を観れるような精神状態ではなくなってきた。 「ごめん、高安。僕やっぱり、ちょっと気分悪いから、今日は帰るよ」 「えっ? 大丈夫かよ!? じゃオレも一緒に帰る――」 「高安は観ていきなよ、せっかくここまで並んだんだからさ」  チケット売り場まではあともう少しだ。 「でも……」  ひどく心配そうな顔をしている親友に、智流は無理して笑ってみせると、一人列を抜け出し、駅まで早足で歩きだす。後ろで高安がまだ智流を呼んでいたが、聞こえないふりをして、駅までの道を急いだ。  今は家に帰って、自分の部屋のベッドに入り、体を丸めて眠りたかった。

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