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第40話 冷たい雨に打たれて

 智流は走り出した。志水と姉がいる家から少しでも離れたくて。  走る智流の顔に雨粒が当たった。雨粒は次から次へと降り注ぎ、あっという間にどしゃぶりとなる。  智流は雨に濡れながらも走り続けた。  やがて走り疲れた智流は、自宅から二十分くらいのところにある公園へとたどり着いた。  そこは小さな公園で、滑り台とブランコぐらいしか遊具はないが、天気のいい日には、幼子を連れた母親たちが世間話に興じ、お年寄りが日向ぼっこに集う。  雨宿りをするような場所はないので、強い雨が降る今、公園には智流以外、誰もいない。  もう少し歩けばコンビニがあるが、既にぬれねずみの智流は、そのままベンチへ座った。  冷たい秋の雨は、智流の心を悲しみの色に濡らしていく。  智流はぼんやりと考える。  志水さんに告白されて、お姉ちゃんはどう返事をするのだろう……?  昨夜、智流に言っていた言葉や、さっきの見るからに不機嫌そうな様子を見る限り、志水の片思いなのかもしれないとも思う。  ……でももしそうだとすると、志水は二度と智流の家へは来ないだろうし、智流とももう会ってくれないかもしれない。フラれた相手がいる家になど、絶対に行きたくないだろうし、その弟の顔も見たくないと思って当然だろうから。  それだけは嫌だ……!  志水さんがお姉ちゃんと付き合う……そんなの考えるのも嫌だ。でも、それでも、志水さんと二度と会えなくなるよりはまだマシだろうか……?   でも……二人が仲睦まじくしている姿を見たら、自分の胸は引き裂かれてしまうしれない。  智流の気持ちは大きく揺れ動き、だんだん自分でも自分の気持ちが、よく分からなくなってくる。  華奢な体に打ち付ける雨の冷たささえ、今の智流は感じていなかった。  迷路に迷い込んでしまったような心を抱えて、ただ悲しみに暮れていた。

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