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第43話 不安を呼ぶ電話
愛香が怒りのオーラをまとったままソファから立ち上がり、電話に出た。
「はい、網埼です。……あら高安くん。え? 智流? いいえ、帰って来てないけど。あなたたち一緒じゃないの?」
困惑したような愛香の声に、志水もソファから立ち上がると、彼女の手から電話をひったくるようにして奪った。
隣で愛香が文句を言っているが無視して、電話を耳に当てる。
「もしもし、志水だけど。智流になにかあったのか?」
《え? 志水さん? どうして?》
高安は、志水が急に電話に出たので驚いているが、それに構わず強い口調で訊ねた。
「そんなことより智流はいったいどうしたんだ?」
《ああ……、はい。実はオレと智流、今日映画観るつもりでチケットの列に並んでたんですけど、途中であいつ気分が悪いからって言って、先に帰っちゃったんです。朝、待ち合わせ場所であったときから、調子悪そうにしていたんですけど》
受話器の向こうから駅のアナウンスの声が聞こえる、高安はプラットホームにでもいるのだろう。
《それでなんとなく気になって、オレも映画観るのやめにして、智流のあとを追ったんですけど、結局追いつけなくて。で、智流のスマホに電話かけたんですけど、映画観る予定だったから電源切ったままで繋がらなくて。だから家のほうにかけたんですけど……智流、まだ帰ってないんですか?》
高安の不安が受話器を通して伝わり、志水もまた不安にかられる。
「智流と別れたのは、どれくらい前?」
どうにも嫌な胸騒ぎを感じた。
《えーと……二時間くらい前かな?》
智流と高安が行ったシネコンから網埼家へ帰ってくるのに、二時間もかからない。
志水の不安が大きくなる。
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