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第44話 小さな公園で
志水は慌ただしく電話を切ると、いろいろと聞いてくる愛香を置き去りにリビングを出て、網埼家を飛び出した。
外は雨が降っていた。いつから降っていたのか、リビングにいるときは話に夢中で気づかなかった。
気分が悪いといって高安と別れた智流は、傘を持っているのだろうか。どこかで倒れているのではないか。もしかしてまたマスダが戻って来ていたとしたら……?
想像はどんどん悪いほうへと流れて行き、志水の心をひどく苛む。
志水はずぶ濡れになりながら、智流を探して回った。
十五分ほど探し回っただろうか、ようやく志水は智流を見つけた。小さな公園のベンチに一人ポツンと座っている。壊れそうな華奢な体に雨が打ち付けていた。
志水は、走り続けたせいで上がってしまった呼吸を整えるのももどかしく、思い人の名前を呼んだ。
「智流っ……」
その声に智流は弾かれたように顔を上げる。
彼は志水の姿を認めると、大きな目を更に大きく見開いた。
志水は狭い公園を突っ切り、智流の傍まで駆け寄ると、その細い体を抱きしめた。
「志水先生? どうして……?」
「高安くんから電話があって……。そんなことより智流、大丈夫なのか? どうしてこんなところで? なぜ家へ帰って来ないんだ?」
すっかり冷え切った智流の体を、志水は自分の体温で暖めるように抱きしめながら、訊ねた。だが彼は唇を噛みしめるだけでなにも答えない。
「こんなところで雨に打たれていたら、風邪を引くよ。とにかく君の家へ帰ろう」
そう言って智流を立たせようとするが、彼は動こうとしなかった。
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