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第48話 相合傘

 智流が志水の腕の中で顔を上げ、ひたむきなまなざしで見つめてきた。 「そんな子供扱いしないでくださいっ……。僕……、僕だって――」  そのとき、後ろから声がした。 「ちょっといい加減にしなさいよ」  驚いて振り向くと、赤い傘をさした愛香が、しらけたような顔で立っていた。 「網埼……」 「お姉ちゃん……」  二人が同時に呟くと、彼女はもう片方の手に持っているクリーム色の傘を志水へ投げてよこした。 「なにまどろっこしいこと言い合っているのよ、この雨の中。風邪引いちゃうでしょ。……二人きりにしてあげるから、続きは家へ帰ってからすれば?」  不機嫌な声でそう言い捨てると、愛香は自宅とは反対側の方向へ歩いて行ってしまった。  智流も志水もとっくにずぶ濡れだ。今更傘をさしてもあまり意味がないような気もするが、せっかくの愛香の心遣いである。  志水は傘をさし、二人は肩を並べて智流の自宅への道を歩いた。  相合傘……。  触れ合っている肩が熱い。なんだかとてもドキドキする。  切ないときめきを抱えながら傘をさす志水の腕に、智流の細くてしなやかな手がそっと触れた。  智流の指先がかすかに震えているのは、雨に打たれ続けて寒いからだろうか、それとも彼もまた、志水と同じ思いを共有してくれているからだろうか……?

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