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第49話 とまらない涙

 家は暖かかった。どうやら姉がエアコンの温度を高くしておいてくれたようだ。  智流は脱衣所からバスタオルを二枚と、両親の部屋から父親の服の上下を持ってきて、志水に渡した。  そして自分は再び脱衣所へ行き、濡れた髪と体を丁寧に拭ってから、新しいセーターとジーンズに着替える。  ずっとドキドキし続けている胸をなんとか落ち着けようと、何度も深呼吸を繰り返したが、無駄な抵抗だった。  それでもなんとかコーヒーを淹れると、志水のいるリビングへ戻る。  父親の服は、志水には上はともかくズボンは丈が短すぎて、ほとんどハーフパンツみたいになっている。それなのにどこかお洒落に見えるのは、志水のもとがいいからだろう。 「智流? どうした? 大丈夫か? まだ気分、悪い?」  志水に見惚れてボーッとなっている智流のことを心配して、彼はソファから立ち上がり傍に来てくれた。智流が持っているコーヒーの乗ったトレイを受け取ってくれ、テーブルの上に置く。 「あ、ご、ごめんなさい。もう全然大丈夫です」  智流が慌ててそう言うと、志水はようやく安堵したように微笑んだ。  優しい、志水さん……。  甘く切ない疼きが込み上げてきて、涙が出そうになるのを懸命にこらえる。  と、不意に志水が智流の手を引っ張った。 「わっ……?」  智流は志水の腕の中へ倒れ込む形になった。 「智流、オレ、ちゃんと君に言いたいんだ」 「え?」  志水が切れ長の綺麗な瞳で、真っ直ぐに智流を見つめてくる。 「オレは智流が好きだ。だから付き合って欲しい。恋人として」  志水の告白に、とうとうこらえきれなくなった涙が智流の瞳から溢れた。  智流は泣きながら、何度も何度もうなずいた。そして涙混じりの声で自分の気持ちを伝える。 「僕も志水さんが好きです……。だから、恋人になりたい……」  さっきまでは雨が涙を隠してくれていたけど、今は止まらない涙を隠すことはできなかった。  

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