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第52話 季節は移ろい……
秋晴れの日曜日、二人は遊園地に出かけ、ジェットコースターに乗りまくった。
その次の休みの日には映画でのデート。
恋人同士になった二人は休日の度に会い、いろいろなところへと遊びに行ったが、それとは逆に平日にはほとんど会えなくなった。
志水が智流の家庭教師のアルバイトをやめたあと、進学塾でのアルバイトを始めたからだ。
今までは月水金の夕方にはいつも会っていたので、寂しくなったが、その分メールや電話でまぎらわせた。
そして秋は終わり、季節は冬へと移ろう。
「智流、クリスマスイブの日、オレの部屋へ来ないか?」
志水がそんな誘いの言葉を口にしたのは、十二月に入ったばかりの休日。二人がよく行く落ち着いた雰囲気のカフェでのことだった。
「えっ……?」
ココアを口に運ぼうとしていた智流は、そのままの姿勢でしばし固まってしまい、それからおずおずと聞く。
「……志水さんの部屋へ行っていいの?」
志水はマンションで一人暮らしをしているが、智流はまだ彼の部屋へ行ったことはなく、これが初めての誘いだった。
「ああ。バイトは休みをとったし、クリスマスイブ、智流と過ごしたいなって思って……」
「行きたい……。志水さんの部屋……」
智流の中でうれしさが込み上げてくる。だが、志水の誘いはそれだけではなかった。
「それでさ、……その夜はオレのところで泊っていかないか?」
「えっ?」
智流は再び固まった。
泊まる? 志水さんのところへ泊まる? それって……。
思わず志水の顔を凝視すると、彼がとても緊張しているのが伝わってきた。
沈黙してしまっている智流に志水は、慌てて言う。
「あ、勿論、泊まるのがだめなら無理には――」
「ううん! そんなことない」
今度は智流のほうが慌ててかぶりを振った。
志水さんのところへ泊まる……泊まる……。泊まる……。
智流の心は張り裂けそうに高鳴っていた。
「志水さんのところへ泊まりに行ってもいい?」と、智流が訊ねたとき、両親は快諾してくれたが、二人が恋人同士だと知っている姉の愛香はとても不機嫌になった。
智流の部屋へやって来て、「襲われそうになったら、股間を蹴り上げてやるのよっ」などと吠えていた。
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