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第57話 初めてのクリスマスプレゼント

 志水は智流にクリスマスプレゼントを用意していた。 「智流、手相見てやるから、手、出して」 「え? 志水さんって、手相見れるの!?」  びっくりしながらも志水の前に手を差し出す智流。  彼の手のひらの上に、志水はジーンズのポケットから出したビロードの小さな袋を置いた。 「……え?」 「オレからのクリスマスプレゼント」 「え? え……?」  智流は目を見開き志水を見つめてから、手のひらの上のビロードの小さな袋に視線を落とし、それからもう一度、志水のほうを見つめる。 「……僕に?」 「ああ」 「……開けてもいいですか?」 「どうぞ」  智流は華奢な指先を震わせながら、巾着になっている小さな袋の紐を解いていく。そして袋の中のものをそっと手のひらの上に落とす。 「これ……」  智流が声を詰まらせる。  志水が彼に贈った初めてのクリスマスプレゼントは、小さな猫がデザインされたシルバーの指輪だった。 「志水さん……」  智流の目にみるみる涙が盛り上がり、大きな黒い瞳がいっそう輝きを増す。  志水はそんな恋人を愛しげに見つめながら、言葉を紡いだ。 「オレ、好きな人に指輪を贈ったのって、初めてだよ」

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