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第59話 守ってあげたい恋人②

 志水は智流をリードして、更に深く舌を絡ませた。  受け止めきれない唾液が智流の唇の端から顎を伝い滴る。  舌が絡む卑猥な音と、少し苦しげな智流の呼吸音を耳にしているうちに、志水の欲望のボルテージがどんどん高まっていく。  志水は智流が着ているセーター越しに彼の体をまさぐった。  胸元、脇腹、腰……、志水の手は忙しなく恋人の体を衣服の上から辿り、やがてセーターの裾から中へと侵入させる。  なめらかな素肌の感触に、志水の理性の糸が切れた。  唇を智流の耳の後ろへすべらせ、うなじへと彷徨わせる。  首筋へ唇を這わせながら、志水は智流をソファへ押し倒した。 「や……、ちょっと、待って……志水さ……あっ……」  智流が荒い呼吸とともに志水の体を押し返してくる。けれども走り出した雄の欲望はすぐにはとまらなくて……。  志水は今一度、深いキスを交わしながら、しっとりと火照った智流の素肌に手を這わせ続けた。 「んっ……、志水さん……」  さっきよりも強い力で、再び智流が志水の体を押し返してきた。両手を突っ張る彼の姿に、ようやく志水に理性が戻ってくる。 「あっ、ごめんっ……」  志水は智流の体を解放した。  だめだ……、暴走してしまった。無理強いだけはしないと決めていたのに……。 「ごめん、智流……」  志水は自分が醜いケダモノのように思えて、酷い自己嫌悪と後悔の念に駆られた。  うなだれる志水に、智流は必死な声で言う。 「ちがっ、違いますっ。僕、あの、い、嫌なんじゃなくって……そ、その、シャワーを……」  智流の言葉の語尾が空気に溶け込んで消える。見れば彼は真っ赤になっている。 「あ、ああ、そうだよな、ごめん……」  情けなくも志水の声はひっくり返ってしまった。  ……あー、マジかっこ悪い、オレ。童貞を捨てたときでももう少し余裕があった気がする。  軽く落ち込みつつも、智流をバスルームへ案内した。  部屋に一人になった志水は、奥にある窓を開け、外の空気を取り入れた。  十二月下旬の夜風は肌を刺すように冷たかったが、志水の心と体の昂ぶりを冷ますことはできなかった。  それでも、とにかく心に強く言い聞かす。  性急にならないように。  智流を怖がらせないように……。  絶対に傷つけたくはないから。

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