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第68話 愛し合ったあと
何度絶頂を迎えただろうか。
志水と智流は快楽の余韻にたゆたっていた。
腕の中の智流は、許容範囲をはるかに超えた快感に半ば放心状態である。
志水は汗でしっとりと濡れた恋人の髪を優しく撫でながら、名前を呼んだ。
「智流……」
声がかなり掠れてしまっているのがなんだか照れくさい。
「智流、大丈夫か?」
志水の二度目の呼びかけに、別世界を彷徨っていた智流の瞳がようやく現実に焦点を結んだ。
「……だいじょうぶ、です」
智流の声もまたひどく掠れている。
「ごめん、オレとまらなくて。ムチャしたよな。……痛かったか?」
暴走した自覚があったので、智流にかなりの無理をさせたのではないかと心配だった。
「んー、少し、ね。でも、それ以上に怖かった……」
「……ごめんな」
志水がもう一度謝ると、智流は眩しいほどの笑顔を浮かべて言う。
「幸せすぎて、怖かったんです……」
「智流……」
かわいすぎる恋人に、志水は優しい口づけを贈った。
気だるくも心地いい余韻を残す体を起こすと、志水はティッシュを取り、二人の体を濡らしている愛液を拭った。
恥ずかしそうに目を伏せて、されるがままになっていた智流が、不意に声をあげた。
「あ、そうだ」
「ん? なに?」
「僕も志水さんにクリスマスプレゼントがあるんです」
そう言って智流は体を起こそうとして、
「……った……」
小さく呻くと再びぱたりとベッドへ沈み込む。
傷つけたりはしなかったはずだけど、初めての情交は、智流の体に少なからずの負担をかけたようだった。
「智流は寝てろよ。オレが取って来てやるから」
「ごめんなさい。ソファの上に置いたと思うんだけど、鞄」
志水はベッドを降りると、なにも身に着けないままで鞄を取って来た。
「はい、これ」
鞄を手渡そうとするが、智流は真っ赤になって向こうを向いている。
「智流?」
「し、志水さん……、せめてなにか穿いてください……」
「え?」
一瞬、志水はきょとんとしてしまった。
さんざん淫らな行為を二人で共有したというのに、裸を見るのが恥ずかしいとは。
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