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第69話 愛し合ったあと②

 さっきはあんなに淫らな声をあげて、志水にしがみついてきたというのに。ウブなところはそうそう変わらないようだ。  智流らしいな……。  恋人の初々しさを微笑ましく見ていたが、あまりにも智流が恥ずかしがるので、志水のほうまで恥ずかしくなってきてしまい、とりあえず下着を身に着けた。  ベッドで向こうを向いたままの彼のうなじにチュッとキスをすると、ようやくこちらを向いてくれた。  智流に鞄を渡して、彼の隣に志水も入った。狭いシングルベッドが今夜は愛しい。  智流は横になったまま鞄の中を探り、綺麗にラッピングされたプレゼントを志水へ差し出す。 「メリークリスマス、志水さん」 「ありがとう。……開けてもいい?」  彼がうなずくのを見てから、ラッピングを解いていく。  智流からのクリスマスプレゼントは発売されたばかりの、ミステリー色の強いホラーDVDだった。 「僕の予算ではそれが精一杯だったんです……」  左手の薬指の指輪に触れながら、智流がすまなそうに言う。 「うれしいよ。明日、さっそく一緒に観ような」  志水が智流のすべすべの頬にキスをすると、彼ははにかんだように笑った。  ……この笑顔に勝る贈り物はないな。  眩しいほどの可憐な笑みに、志水はそんなふうに思った。 「ね、今夜はずっと志水さんと一緒にいられるんだよね……」  小さな頭を志水の腕に乗っけて、智流が呟く。 「いつもさ、デートしても夜には離れなくちゃならないでしょ? あの瞬間が僕、とても寂しくて。すぐまた会えるし、メールや電話もできるって自分に言い聞かせても、やっぱり寂しくって。でも今夜はこのままずっと志水さんと一緒にいられるから、すごくうれしい」 「智流……」  志水もまた同じ思いだった。 「これからは、いつでも泊まっていっていいよ。オレも智流に傍にいて欲しいから」 「ほんとに? 志水さん」 「ああ。でも、おうちの人にちゃんと了解とってからだぞ?」 「うん。でもお姉ちゃんには言わないほういいかも」 「それは言えるかもな」  二人は見つめ合い、笑い合った。

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