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第70話 語り合う二人

 時刻は午前零時を回り、二十五日、クリスマスになっていた。  時々遠くのほうで、車が走り去る音が聞こえるだけの静かな部屋で、志水と智流はベッドで寄り添ったまま、他愛のない会話を楽しんでいた。  ミステリーとホラー小説の話。テレビドラマの最終回の話、猫たちが会議をする場所の話、くるくると話題は変わる。  どんなとりとめのない話でも、とても楽しく笑い合えるのは恋人同士に与えられた特権だろう。  語り合う中、智流がふと聞いてきた。 「ねー、志水さんは将来、なにになりたいとかあるの?」 「なに? 突然」 「あのね、うちのお姉ちゃん、来年の四月から化粧品会社で働き始めるんだけど、第一希望の会社に受かったから、もうはりきっちゃって」 「へえ、網埼には合ってる仕事っぽいな」 「僕もそう思う。……でね、志水さんはどんな仕事に就きたいのかなって思って。なんていうか志水さんなら、どんな仕事でもスイスイこなしちゃいそうだし。それこそ芸能人でも芸術家でもなんでも来いって感じ」  智流の言葉に志水は苦笑する。 「ありがとう。でもオレ、そんなに器用じゃないからなー。まず芸術関係は完全に無理だな」 「……じゃ教師、とかですか? 今も進学塾のバイトしてるし、志水さん教えるの上手だから向いてるぽいけど……」  智流の言葉が元気なく消える。 「智流?」 「志水さんが教師になるのは、やだなって。だって僕だけの先生でいて欲しいもん。……本当はね、今の進学塾の生徒さんたちのこともうらやましくって……嫉妬しちゃう」  拗ねて本音を語る智流がかわいい。 「教師になる気はないよ。進学塾のバイトは学生のあいだだけだし。でも智流の先生だけはずっと続けたいな」 「ほんとに?」  志水が微笑んでうなずくと、智流が抱きついてきた。  志水は彼の華奢な体を抱きしめ返す。  

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