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第7話「愚かな遊戯」
神父様は上着を脱ぎ、畳んでこちらを振り向いた。
ロザリオは、青白い手に握り締められたままだ。
「あれ? 外さないんです?」
「……ここでするなら、『かかる』こともなかろう」
あー、なるほど。
ベッドでシてる時は、精液で汚れるかもだもんな。口に出すことも多いし。
「なら、今回は飲まなくていいってことです?」
「……血は足りている」
「ナカに出すのは?」
「好きにしろ」
「へーい。じゃ、さっそくヤりましょ」
股間はパンパンに膨れ上がっていて、もう限界に近い。神父様もそれはわかっているみたいで、無言で頷いてくれた。
神父様には壁に手をついてもらって、オレが背後から覆い被さる。
「ぃ、あ……っ」
肌着の上から胸をまさぐると、切ない声が漏れる。毎日のように弄 ったからか、神父様、最近感じやすくなってる気がする。
指先に触れた取っ掛りを肌着の上から軽く引っ掻き、弾くと、引き締まった腰がビクッと跳ねた。
「……ちょっと痩せました?」
肌着の中に手を入れ、腰を撫でさすり、腹筋に指を這わせる。
「余計な……こと、は……っ、い……ぁ、く……ぅうっ」
神父様の文句は次第に快感に飲まれ、嬌声 に塗り変わる。
歯を食いしばって声を堪える姿がいじらしくて、更に下の方に手を伸ばした。
「あ、勃ってる」
「……わ、わざわざ言うな……っ、あっ!?」
文句を言う神父様のソレを握り込むと、高い声が上がり、小さく腰が跳ねる。
「へへ……気持ち良さそ……」
「ぐ……! やめ、握……っ、んん……ッ!?」
そのまま上下に扱くと、神父様の脚ががくがくと震え、身体が崩れ落ちそうになる。片腕で支えつつ、オレのブツを取り出して腿 の間に擦り付けた。
「……ッ」
挿入を覚悟したのか、息を飲む音が下から聞こえる。……正直めちゃくちゃぶち込みたいけど、我慢して訊いてみた。
「……欲しいです?」
腿にゆっくりと擦り付けながら、神父様の先端をグリグリと刺激する。
「う、ぁあっ、……きさま……っ」
「欲しいなら、そう言ってみてくださいよ。……ねぇ?」
胴体を支えていた方の腕を滑らせ、胸や腹をゆっくりと愛撫する。肌着の上から傷痕を撫でられ、神父様の吐息がどんどん熱っぽくなっていく。
「……ッ、どうなんっすか。オレ、おねだり聞きたいです」
耳元で囁くと、ギリッと歯噛みする音が聞こえる。
……それでもオレは、喉の奥から絞り出すような、掠れた声を聞き逃さなかった。
「……く……ぅ……、ほ、欲しい……」
無意識なのか腰を揺らし、神父様がオレのイチモツをねだっている。
まるで獣のメスのように、オスを求めている……。
「は……ッ、めっちゃイイ……。ありがとうございます、サイコーに興奮してきました……ッ」
ひくついた後孔にオレの先走りを塗り付け、神父様の竿を握っていた手で今度は玉の方を揉む。
「あぁっ!?」
甲高い声を上げ、神父様は情けなく精を吐き出した。
腹を撫でていた方の手のひらで受け止めて、後孔の方に塗り付ける。
「挿れますね」
今回は口に出さなくていいって言ってたし、神父様は床が汚れるのがあまり好きじゃない。
……ってことは、もうナカに出すしかねぇよな。「好きにしろ」って言ってくれてたし。
もし赤ちゃんできたら、それで「神様に祝福されてる」って、神父様は思ってくれるかな。
「……孕んでください、神父様」
オレなんかじゃ人並みの幸せすら与えてやれねぇけど……でも、愛してやることはできる。
大好きだよ、神父様。オレを救ったのは神様じゃない。アンタだ。
みんなオレのことを煙たがったし、みんなオレのことを嫌った。オレだって、自分のことなんか大嫌いだった。
だけど、アンタは手を差し伸べてくれた。「奪う以外の生き方がある」って、言ってくれた。
口だけかもしれない。仕事で仕方なく言っただけかもしれない。……それでも……それが、どれだけ有難いことだったか。
「わ、私は男だ……ッ、ぁ、待っ……くっ、ふ……ぅう……!」
挿入し始めると、抗議の声も喘ぎにかき消されていく。
「大丈夫です……っ、神父様、なら、絶対……ぜったい、孕めます……! そんな顔してるし!」
締まった腰を掴み、後ろから突き上げる。
……ココとかちょっとだけくびれてるし、神父様ならイケそうな気もする。つか、たぶんイケる。母乳だって出るだろ。よく考えたら、神父様ってめちゃくちゃ母乳出そうな顔もしてる。
「あ、ぅ……ん、く……っ! ……ど、どんな顔……だ……っ!」
あー、でも、子供できたら大変かな。
赤ん坊のうちは肉食わねぇんだっけか。だったら 、そこら辺の野ウサギとか掴んで絞め殺す特技も使えねぇしなぁ。
三人くらい欲しい気もするけど、育てるの大変だし……神父様の心が癒えてからのが良いよな。
「……やっぱ、まだ子供は早いですかね……っ?」
「はぁっ!? ぁ、んぁっ、は……早いも、何も……ぉッ、で、できな……ぁあっ!!」
オレが乳首を摘むと、神父様は背筋をぐいっと反らし、それに合わせてナカも締まる。
肩口に唇を寄せ、赤い痕をいくつか残す。オレの肩口にも牙の痕があったりするし、お揃いっぽくてなんだか嬉しい。
「あぁあッ、ぃ、イく……っ」
「……! え……っ、イキ顔見たいです」
「なっ、ぁ、あっ、体位……今、変え……ッ!?」
神父様の片脚を持ち上げていったんイチモツを引き抜き、身体を反転させて挿入し直す。
オレはガキの頃から怪力だし、それなりにゴツくなった今じゃこれくらい造作もない。
「やめ……っ、見る、な……! ……ぁ、~~~~ッ!!」
弱いトコを突き上げると、神父様はそのままイッちまったらしい。
ぱくぱくと口を開閉し、見開かれた瞳からは涙が伝っている。口の端から唾液が垂れているのもエロい。
崩れそうな身体を抱き留め、支える。蝋燭の頼りない灯の下、すっかり快楽に蕩けた顔が照らされている。
「は……、やっべえ……」
そのまま本能に任せ、全部ナカにぶちまけた。
「……ちょっと意地悪しちまいましたね。すみません」
「ん……」
頭を撫でると、神父様は珍しく安心したような声を出す。
目を細めてオレの手にすり寄る姿が、めちゃくちゃ可愛い。
「……お赦しください……」
オレの背中に縋り付き、神父様は小さく肩を震わせた。
顔を見られたくないんだろう。……今は、無理やり見る必要もねぇか。
震えの止まらない身体を抱き締め、今度は背中を撫でる。
泣いたって、笑ったっていいんだよ、神父様。
……アンタはじゅうぶん頑張ったし、じゅうぶん傷付いたろ。もう、苦しまなくていい。
そりゃ、人を殺すのはいけないことだ。……でも殺してるのはオレだし、殺されたのもみんな、アンタを殺しに来たヤツらじゃねぇか。
アンタが気に病む必要なんか、これっぽっちもない。神様が許さなくても、オレはアンタを許すから。
……だからいつか、また笑ってくれよ。神父様……。
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