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運命のマッチング 5

「やばい、のか……?」  目的地に着いてさっそくの後悔。  いや、正しくはそこに来て送られてきたメッセージを見て、今さらの危機感を覚えたというか。 「ここじゃないの?」  昨日向こうから指定された待ち合わせはホテル内にあるカフェだった。  いやらしい意味のホテルではなく、普通に滞在する方のホテルだったけれど、一応警戒してカフェのことを調べはした。さすがに僕でもそれぐらいは考える。  すると吹き抜けで自然光が眩しい、季節ごとのアフタヌーンティーが楽しめるカフェだった。とてもオシャレで、お見合いでもするような場所だ。  僕よりも五歳年上らしい大人だったら、こういうところで会うのもおかしくないのかと安心してやってきた。それなのに。  着きましたとメッセージを送ると、「上がってきて」の一言と部屋番号が届いた。  カフェと部屋じゃ距離感が違いすぎる。  ここまで来て、さすがにまずいのではと焦り始めた。柳くんの言葉をちゃんと聞いていれば良かったかも。  ……ただ筋肉はないけれど僕だって男だし、普通のオメガ程小さくも華奢でもない。たとえなにかあっても押しのけて逃げるくらいはできるだろう。  周りを見回せば、優雅なティータイムを過ごす上品なマダムや仕事の話をしているようなぱりっとしたスーツのサラリーマンたちが目に入る。  この場所でこんなことで焦っている自分が滑稽に思えるほど、なんとも穏やかに時間が流れている。 「……行ってみて、やばそうだったら逃げよう」  話が話だけに、カフェで会うのが恥ずかしくなったシャイな人なのかもしれない。あえて二人きりの方が緊張しないと考えてくれた優しい人なのかも。きっとそうだ。  そう自分に言い聞かせ、僕は決心してエレベーターに乗り込んだ。  ……まさかいきなり襲ってくるってことはないだろう。

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