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水が繋ぐ 6
夕飯後、今日はお開きとあかりさんが家まで送ってくれることになった。
僕は断ったけど、せめて駅まで、せっかくここまで来たら、と結果的に家まで送ってもらってしまった、んだけど。
「わああああなんで!」
車を下に停め、玄関までと送ってくれた優しさを台無しにするように、そのちょっとの間でめちゃくちゃ雨に降られた。雨の予報なんかなかったというのに、一瞬の豪雨に思考が飛ぶほど降られた。
ほんの少しだと走った結果が、どうしようもないほどのびしょ濡れっぷり。むしろイルカの時よりも濡れたし、あの時よりも冷たくて楽しくない。
なんでもっといい別れ方をさせてくれないんだ。最後くらいオシャレに別れて今日はお疲れさまでしたのメッセージを打つことを考えていたというのに、台無しがすぎる。
「今日は降られ続きだな」
肩をすくめてため息をつくあかりさんもびしょびしょ。もはや拭くことさえ諦めている。
「なんか、ごめんなさい」
「泉が謝る必要はないだろう」
申し訳ない気持ちでいっぱいで頭を下げると苦笑いが返ってきた。もちろん僕には雨を降らせる力なんてないけど、それでもここまで送ってもらわなきゃ少なくともあかりさんは濡れずに済んだのに。
「風邪引かないように早く部屋入りな。それじゃあ」
「あ、あの……!」
一言も僕を責めず、それどころか僕の心配をして帰っていこうとするあかりさん。
でも、このまま帰すわけにはいかない。だってあかりさんは毎日仕事が詰まっていて忙しいのに、こんなことで風邪を引かれたら困る。ファンとしてこのまま見過ごすことはできない。
車までの傘を渡すだけの方が早いかもしれない。びしょ濡れだとしても、早く帰ってもらった方がいいのかもしれない。それでも。
「ちょっとだけ、家に寄っていきませんか」
「え?」
帰ろうとしたあかりさんを掴んで引き留め、思い切って口を開いた。
「シャワーを浴びてください」
「……え?」
家に来てシャワーを浴びて。
体調のことしか心配していないのに、ストレートな誘い文句みたいに聞こえてしまうのは僕が悪いんだろうか。柳くんならきっと迷いなく肯定するだろう。
果たしてあかりさんは、少しの逡巡の上で「じゃあ少しだけ」と玄関のドアを潜ったのだった。
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