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我が家は色々ありすぎる 4
「あッ、あかりさ……んっ」
上擦ってる自分の声がどこか媚びるようで、恥ずかしくてどうにかしてくれとあかりさんに抱きついた。それをきっかけにあかりさんが扱く手を速め、息ができなくなった瞬間白い光が弾けた。
「ひッ……っく……!」
腰から下が爆発したみたいに感覚がなくなって、気づいたらあかりさんの手の中にすべて出し終えていた。どくどくと脈打つそれと動悸が一緒になって破裂しそうになる。
「はあ……はあ……」
なにがなんだかわからず、脱力した体でベッドに沈む。起こったことがなにも理解できない。
「ごめんな、無理させて。あんまりにも泉が可愛くて」
ただ、頬にキスを落としながら謝るあかりさんの色っぽ過ぎる顔を見て真っ白になっていた頭が一気に冴えた。
「手拭いて! 違う、洗って!」
跳ね起き、色んなものをなぎ倒して掴み取ったティッシュをあかりさんの汚れた手に押し付ける。それだけじゃ足りずにごしごし拭き取ったけど、そんなものじゃ足りないから洗ってくださいと蛇口を指さした。
呆けていたかと思えば突然騒ぎ出した僕にあかりさんは一瞬呆気に取られていたけれど、すぐに手を洗いに行ってくれた。
とんでもないことをしてしまったと自らも後始末をしながら泣きたくなる。
僕がちょろすぎるせいで推しを汚してしまった。罪が重すぎる。
「ごめん。強引だったよな」
「違うんです。そうじゃなくて」
「ちゃんと段階を踏もうと思ってるのに、泉といるとすぐタガが外れるんだ。悪いとは思ってる。でももっとしたいのも本音」
戻ってきたあかりさんに、心配するように抱きしめられて首を振る。そんな僕にあかりさんは囁くように、けれどはっきりと告げた。
「本当は早く番になりたい。だから泉。早くちゃんと覚悟を決めて」
直に耳に届く距離で、聞き間違いのできないはっきりした声音で。
あかりさんは自分の想いを言葉にしてくれる。そして自分から希望を出していたくせにいまだに踏ん切りのついていない僕への決意の促しも。
「あかりさん……」
「今日は帰んなくちゃいけないから、続きはまた今度。ちゃんと泉が望んだ時に」
呆然としたままの僕の頭を撫で、額にキスを落とし。
これ借りてくな、とスウェットを指して、あかりさんは立ち上がった。濡れた服を回収することもちゃんと忘れない。
「俺を受け入れる心の準備ができたら言って。そうしたら今度はちゃんと泉を抱くから」
最後に大事な約束をして、あかりさんは帰っていった。どうやらもう雨は上がっていたらしい。
「……どうしよう」
あかりさんが出て行ったドアをじっと眺めてしばし、僕は項垂れるように両手をついた。
疲れた。なんか、ものすごく疲れた。
どうしよう。みんな毎回こんなことしてるの?
セックスって、これで終わりじゃないんだよね? これ以上があるの?
……もしかして番になるって、ものすごいことなのか?
今さら自分が「番」というものに対して軽く考えすぎていたことを思い知らされて愕然とする。
こんなに頭が焼ききれそうなことをして、いやこれ以上をして番になるのなら、僕には無理じゃないだろうか。
ただでさえあんなに恥ずかしかったのに、本当にしたら死んでしまいそうな気がする。
ヒート中に一人でする時は、とにかく熱を発散したくてひたすら擦って出す感じだったけど、相手がいるとこんなにもものすごいことになるのか。それともあかりさんがとんでもないテクニシャンなのか?
すごい発見だとは思うけど、こればっかりは柳くんに報告できることじゃない。というかもしも言おうものなら「……バカなの?」とものすごく軽蔑した目で見られそう。
いや本当に、僕はバカなのかもしれない。本当に、番になるって意味が全然わかっていなかった。わかっているつもりだったけど、思っていたのと全然違った。
なんにせよ、すべてが想像外の出来事でまだ頭の整理ができていない。
今日一日の展開が目まぐるしすぎて、どこから記憶を片付けていいのかわからずベッドの上でぼーっとしているとインターホンが鳴った。
あかりさんがなにか忘れ物でもしたのだろうか。
ああでも今顔合わせるのは少し恥ずかしいなと考えながら、誰かも確かめずドアを開けた。
「はい……潤?」
「よう。お疲れのところ悪いけど、ちょっと聞きたいことがあってさ」
そこにはなぜか潤がいて、反射的に閉めようとしたドアの隙間に足を挟まれる。
「……なに?」
前に一度、潤がどういう人間か知らない時にみんなで集まって家で課題をしたことがある。だから家の場所は知られていて、訪ねてくるのも可能ではあるんだけど。
問題は、なぜ、来たか。しかも今。
正直とても嫌な予感しかしない。
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