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殺人犯Rとカウンセラー

相馬がこれからのカウンセリングについて 頭を抱えているとコンコンとノック音が。  「相馬、入るぞ」 ガチャッとドアを開けて入ってきたのは慎也。 「あ、慎也先生……!あのカルテ今出します!!」 「あー、そんなんは後でいい」 先程陸が座っていた席に腰掛け 相馬と向き合う。 「カウンセリング止めたかったら、いつでも言ってくれていいからな。少しお前には荷が重すぎると思っている……」 「い、いえそんなこと……!」 慎也の申し訳なさそうな表情に 慌てて笑顔をふりまく。  そんな相馬を見て 彼はキッと真剣な顔つきになった。 「お前には……話しておいた方がいいかもしれないな」 彼の言葉にクエスチョンマークを浮かべる。 《相馬がカウンセリングする前の陸》について慎也は話し始めた。  杉本陸が捕まって数日がたち 今日が始めてのカウンセリングの日。  カウンセラーはこういう事件に詳しいベテランで 陸は全てを話すだろうと誰もが思っていた。 「こんにちは、陸くん。僕は君の担当のカウンセラーだよ。……まずは君の名前から教えてくれないかな?」 優しく、解すように問いかける ベテランカウンセラー。  やはり……相馬とは違い経験の差を感じるものだ。  だが彼はそんなカウンセラーの言葉に目も向けず ポツリと一言呟いた。 「……オレが望んでいるのはお前じゃない。安達相馬を出せ」 イライラしながら 椅子に踏ん反り返り カウンセラーを睨みつける。 「え……安達相馬くん?……ああ、あの新米カウンセラーだね」 なんで君が相馬くんを知ってるのかな? と問いかけるカウンセラーに 陸はガンッと拳を机に叩きつけた。 「うるさい、無駄口を叩くな。オレは《相馬さん》を呼べといった。《相馬さん》とのカウンセリング以外、受けるつもりはない」 そう言ってカウンセラーに威圧をかける。 「……でもね、陸くん。……相馬くんは新米でまだカウンセラーの成り立てなんだよ。……だから、まだ彼にカウンセリングは早いと思っているんだ」 それを聞いた彼は ガシガシと腕をかきむしる。 「黙れ。貴様と会話する気はない。……どうしても、相馬さんをオレの担当カウンセラーにしないというのであれば、ここで舌を切って死ぬ」 ガシガシと勢いよくかきむしった腕には 血が流れでて 机を真っ赤に染めていく。  陸は無表情で腕をかきむしるのを止め 側に置いてあったハサミを手に持つ。 「オレの担当カウンセラーは安達……相馬だ」 そう言い捨てると 口を開け、舌を出す。  そしてハサミを徐々に舌に近付けていく。 「や、止めなさい……!」 慌てて止めに入ったが 彼はそのカウンセラーを殴り飛ばし 馬乗りになった。 「相馬さんを呼べ。相馬さんを俺の担当カウンセラーにしろ。相馬さんを呼べ。相馬さんを俺の担当カウンセラーにしろ。相馬さんを呼べ。相馬さんを俺の担当カウンセラーにしろ。相馬さんを呼べ。相馬さんを俺の担当カウンセラーにしろ」 呪文のように言いながら カウンセラーを何度も殴り付けた。  ……その一件を気に会議で相談をした結果 満場一致で陸の担当カウンセラーは 相馬に決定することに……。 「……というわけなんだ」 相馬の全身にはブルッと鳥肌が立つ。 「お前……辛かっただろう、怖かっただろう……?もう無理はしなくていい。お前には早すぎたんだ」 慎也は彼の手を包むように握り 陸によって爪をたてられた切り傷を 哀れんで見つめる。 相馬はその彼の言葉に 心底甘えたかった。  正直な話 もう陸の顔すら見たくはない。 (俺がここで止めるのは簡単だ……。けど、そんなんでは何も解決しない。それに助けを求めるようなあの表情……) 頭に過った考えを吹き飛ばし、慎也を見据えた。 「俺に……陸のカウンセリングを任せて下さい。逃げません。真実からも……杉本陸からも……!」 ギュッと強く彼の手を握り返す。  慎也はそんな力強い彼の顔をみて 薄ら笑みを浮かべた。 「さすが、俺が見込んだ男だ!」 そう言うと相馬から手を離し ガシガシと強引に頭を撫でる。 「俺は……陸を救います!」

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