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ためらいがちに
陸と喧嘩した、理由は今となっては覚えていない。
…………喧嘩と言っても俺が一方的に怒っただけなのだけども。
「―――!!もういい!陸なんか大嫌いだ!!」
この一言を最後に陸とは一切会話していない。
流れるテレビのバラエティー番組。
タレントが下品に笑うのを心の中で喝をいれながら横目で彼を見ると
やっぱりテレビを見て楽しんでいるというよりは
画面をただただ見つめている、そんな感じ。
俺と陸の距離、30センチ、されど30センチ。
手を伸ばせば届きそうな距離。
一言あやまればいいだけなのに、何故か口に出せない。
この期に及んでまだ謝れないのは俺のちっちゃなプライドのせい。
しばらく、黙ってテレビを見ていると彼が口を開いた。
「…………今、この距離がオレ達の心の距離。縮めるには……………どうしたらいい?」
そういって陸は俺を見つめる、どうしたらいい?
そんなの…………。
「近づけば距離が縮まる、触れれば距離は0になるじゃないか?」
そう俺が言うと
ためらいがちにのばされた彼の手が俺の手に触れる。
握られたと思ったら
強く引っ張られて陸の胸へダイブした。
「………0になった」
そういって俺の背中に腕を回し、肩に顔を疼くめる。
「………その……………オレも悪かったよ……」
こちらもためらいがちに顔を疼くめる陸に囁くと
俺も背中に腕を回した。
お互いのぬくもりを触れるだけでこんなにも安心できる。
「相馬さん……まだオレの事大嫌い?」
肩から顔を離して鼻先が触れる位まで近づいて疑問を投げ掛ける。
「ごめん、大嫌いなんて言って………大好きだ、陸」
彼はいつもの笑顔を向けると俺の唇に優しく口付けた。
「ところでさ、何で喧嘩したんだっけ?」
「相馬さんかオレ、どちらがより愛しているかって喧嘩したんだよ。覚えてる?」
「…………………なんか痛いな俺達………」
「それは言わない約束だよ」
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