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会話も無く、歩く。車道側は必ず芝崎で…。
こういうさり気ない所を見せられると。
やっぱりモテるんだろうな…とか、つい考えてしまう。
性格は…悪くない。寧ろ優しいと思う。
背も随分と高いし。
顔も若干幼さが残るものの、爽やか系でかなりの男前だ。
体格もしっかりしてるから、男らしくて頼りがいあるし…。加えて明るく社交的だから、友達だって多いみたいだ。
こんな人見知りな僕でさえも、
気を許すくらいだから。
コイツの人柄は多分、本物だと思う。
やっぱり…彼女とか、いたんだろうか?
いやこの場合は、もしかしたら彼氏とかになるのだろうか…?
芝崎自身は、同性愛者ではないとは言っていたけれど。
どうなんだろう…
考え出すと何だか、もやもやして落ち着かない。
「あっ…!!」
僕が密かに抱いた邪念を払っていると、
芝崎が突然叫び声を上げ…前方へと駆け出す。
向かう先には、2人組の女子高生。
もしかしたら知り合いなのかと、幾分ソワソワしながら様子を見守っていたら───…
『きゃあッ…!!』
車道のトラックが女子高生の近くを横切ろうとした瞬間、芝崎が間に立ちはだかる。
するとトラックは勢い良く巨大な水溜まりを通過し…
瞬間、泥飛沫が3人へ襲い掛かった。
その殆どを、芝崎が受け止める。
トラックは止まることなく走り去ってしまった。
「芝崎っ…!」
駆け寄ってハンドタオルを手渡すと。
芝崎は平気とばかりに苦笑で返してきて。
「ごめんなさいっ!!庇って貰って…」
状況を把握した女子高生のひとりが、
慌ててハンカチを差し出す。
小柄で大人しそうな彼女は、
心配そうにずぶ濡れの芝崎を見上げると───…
何故かピシリと固まってしまった。
『あっ……。』
2人の目が合い、同時に声が漏れる。
「町田 …」
「芝崎、君…」
名前を呼び合う空気に、
なんだか友達以上の繋がりを感じ…
胸の奥がざわりとして落ち着かなくなった。
いつもだったら人懐っこい笑顔で、明るく振る舞う癖に。
芝崎はどこか気まずさを醸し出すものだから…
それはもう明らかに、不自然としか思えなかった。
沈黙したままのふたり。
たまらず僕が芝崎の名を呼べば、
ビクッと肩を揺らして。
ようやく、その重たげな口を開いく。
「久し振り、だな…。元気してたか?」
僕と話す時とは違う、男っぽい口調。
それは、僕の知らない…芝崎の姿。
町田さんと呼ばれた女の子は、節目がちにも微笑む。
睫毛が長く、
くりくりとした大きな瞳の…
男なら守ってあげたくなるような、
とても可憐な女の子だった。
「うん…芝崎君も、具合はどう…?完治したって聞いたけど…。」
そう言って、芝崎の足にチラリと視線を移す。
何故だか町田さんも、その表情は固い…。
…具合?完治?
入っていけない話題が、僕の胸を貫く。
更に、町田さんの台詞に動揺して…
僕を盗み見た芝崎にも、なんだか苛々してしまった。
どす黒い感情が内にとぐろをまいて。
僕は、何だか
汚い…。
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