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パタンと救急箱の蓋を閉める。 上原が難しい顔して黙ってしまったから… 少し息苦しい。 だからと言って、僕は気の効いた会話を切り出せるような性格では無いから。そこはじっと耐える他無かった。 膝を抱えベッドを背もたれに、 ぼんやりと時計の針に耳を澄ませる。 そう言えば、まだ上原に家まで運んで貰ったお礼を、告げてなかったなと思い出し。口を開こうと隣の彼を見やると…。 「っ………!」 何処か遠くを見ていた筈の上原が、悲痛な面持ちで僕を見つめていて。 まさか泣いているのか…と思わせる程、とても苦しそうな表情だったから… 僕は気まずくても目を逸らさずに、 真っ向からそれを受け止めた。 「……どうすんだ、お前…?」 それは曖昧な問い掛けではあったが。 鈍感な僕にでも、なんとなくだが…上原の言いたい事が理解できた。 母にも言われた事。 僕を一番理解してくれているからこそ、助言してくれて。きっと言葉少ない不器用な僕にも、非があるのだと気付いたから…。 ちゃんと向き合わねばならない。 例えまだ正しい答えが、今は見つからなくても。 ひとつ、ひとつ、 失敗を受け入れ、獲たモノを吐き出さなくては、 何も伝わらない、何も、始まらない…。 意を決し、深呼吸する。 喉がカラカラと奥で震え、咽せてしまいそうになっても、ちゃんと。 「…芝崎の事は、正直どうしていいか、解らない。けどっ…上原には伝えなくちゃいけない事が、あるん…だ。」 一度でこんなに言い切れた自分に驚く。 だが、これで終わりじゃない。 「苦しくて、潰れそうになって…上原に優しくされて。僕はお前のその気持ちを、利用してしまった…」 アイツが居なくなった場所が、 余りにも虚しかったから。 お前の好意に甘んじて、また知らないフリをした。 「自分が不甲斐ないばかりに、上原を傷付けていると知っていて───…その所為で、ふたりに喧嘩までさせてしまっ、て…」 涙が溢れる。 上原は奥歯を噛み締め、 黙って僕の拙い言葉に耳を傾けてくれる。 「こんな僕でも、好きだと言ってくれたのにっ…!」 僕は、 「もう、いい…。」 堪らなくなって、上原が僕を抱き寄せる。 ボロボロと止めどなく零れる熱い滴が、彼の肩を濡らした。 「ごめんっ…僕は…」 僕は、 芝崎が好きなんだ。

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