51 / 67

4

「明日もバイト無いし、時間気にしなくていいから。先輩と一日中ゆっくり過ごせるなんて…も~一生分の運使い切っちゃったかもっス…。」 それから芝崎はきっちり完食し、ふたりシンクに並んで後片付けをしていた時の事だった。 「後はいいから…先に風呂、入っていいぞ?」 色々と都合があるので… さり気なくお風呂を進めたのだが。 何故か芝崎は不思議そうに目を丸め、固まってしまい。 「…どうした?」 「えっ…?一緒に入るんじゃないんスか?」 ガシャ――――ン!!! つい落としてしまった食器は、無事だったものの…。 芝崎の爆弾発言に動揺は隠せず、 僕は慌て口を開いた。 「なっ…、ちょっと待て!なんでふたりで入るのが前提なんだ!?」 僕の気持ちなど、お構い無し。 芝崎は眉を八の字に下げて返した。 「えっ、だってオレら恋人同士なんスよ?そんなの当たり前なんじゃ…」 いやいやそれはどこ調べの一般常識なんだ? …少なくとも、僕には適用されないぞ…。 「だっダメだ!無理っ…そんなの有り得ない…」 「そんなぁ~…」 ちょっと可哀相だが、こればかりは譲れない。 入れるもんだと楽しみにしていたのか。 半ベソかいてしゃがみ込む芝崎。 でも、仕方ないんだ。 僕にだって準備しなきゃならない事があるんだから… いきなりお風呂とか、まず耐えられそうにない。 今夜は特別だから。 芝崎にとってはただのお泊まりだとしても、 僕は───… その時を迎え、コイツとの関係がどうなっているかなんて…怖くて想像も出来ないけど。 こういう事は最初が肝心だからと、母がしつこく念押ししてたから…。 裸の付き合いはまだ…おあずけだ。 (こんなコトで、嫌われたくないんだ…) 受け身だけでは関係は築いていけない。 それは身を持って実感したはず。 だから、進まなくては。 未だにしょぼくれる芝崎に、僕は心を鬼にして。 強制的に大きな背中を浴室へと追いやった。

ともだちにシェアしよう!