52 / 67

5

side. kentarou 「はふ~…」 扇風機全開で当たって髪はもう乾いたのに。 やけに火照った身体は、夏の暑さや風呂上がりの所為なんかじゃなかった。 もう何度も訪れた先輩の部屋も…。 今日ばかりはまるで異空間にいるみたいで、 メチャクチャ落ち着かない。 加えて心臓は、先輩からの初発信メッセージを見た時から…バクバク鳴りっぱなしで。 今にも爆発してしまいそうな勢いだった。 “泊まりにこないか” 疑問符も何にもない、シンプル過ぎる文面。 初めて先輩の方から送られてきた、メッセージの内容がソレだなんて…すぐには信じられなくて。 何度も何度も送信者の名前を確認したくらいだ。 正直言ってオレの欲求不満は、もう限界だった。 を好きになった時点で、ある程度覚悟してたつもりだけど…。 やっぱりしんどくって。 男同士でもセックスが可能なのは、大体調べたから… やり方は知ってたけど。 だからこそ、先輩に欲情して、 理性が飛びそうになるたんびに。 なけなしのソレで、ギリギリ耐え抜いてきたんだ。 言うまでもなく、先輩は恋愛初心者。 反応を見れば歴然。 頭はメチャクチャ良い癖に、 そういう知識は小学生並みだし…。 まさに絵に描いた純潔。 …だからこそ、大事にしたいと思う。 汚してしまうのはカンタン。 オレの手で、オレだけを知って。 オレに溺れてくれれば、どんなに幸せだろう。 けど、現実は不安でいっぱい。 流石の先輩も、男女間の営み位は知っていると思う。 けど、男同士になると話は別。 元より交わる為に存在する女性のソレは、男には無くって。 変わりに先輩には、あり得ない場所で、 オレを受け入れてもらわなくちゃ、ならないんだから…。 いきなりそんなことしてしまったら、抵抗ありまくりだろうし… 真剣に逆も考えてみたけども。 それはちょっと絵的にあり得ないってか…無理っていうか… いや、先輩が望むならオレは────…イヤイヤ…。 とっ…とにかく、“普通”では繋がれないから。 叶うならいずれ、とは思うけど。 無理なら、一生このままでもいいかななんて… そりゃ浅はかな考えな訳で。 成長期&発情期な身体は嘘を吐けず。 ことあるごとに反応しては、オレを戒めていた。 (ダメだ、そんなことあり得ないからっ…鎮まれムスコ!!) 先輩に下心なんてあるわけが無い。 これはただのお泊まりで。 今はそれで、充分じゃないか。 先輩の手料理食べて────風呂はまあ当然ながら、 結構ガチめに拒絶されちゃったけど… 一緒に寝床について。 肩並べてたくさん話し込んでさ。 いつの間にか朝になってれば────… いいんだけどなぁ~…。 「はぁ~ヤバいぃ、先輩の匂いする…。」 ここは駄目だ。脳みそが沸騰してきた。 もうムラムラして敵わない。 オレの入った風呂に、先輩も浸かってるってのを想像しただけで…オカズになりそうなのに。 …しかも風呂待ちとか? このラブホみたいな展開に、期待しない男の方が終わってるっての!! あ~いかんいかん、無心にならねば…。 とりあえず気を紛らわせる為に、先輩の部屋をキョロキョロ。 基本シンプル。青基調の家具やらカーテンとかは、 およそ先輩のイメージ通りで。 本棚には解読不可な分厚い本がギッシリ。 マンガのまの字もない。 むしろひらがな少ないし…と、ここまでは普通なんだけども。 (クマさん、かわい…) サイドボードには、ピンクとブルーのペアのテディベアがちょこんと寄り添って座ってるし。 隣りにはガラス細工の、乙女ちっくな写真立て。 中には幼少期の無表情な先輩を挟み、先輩のママさんと…パパさんらしき人が頬を寄せ、幸せそうに写ってて。 なんだか微笑ましい一枚。 他にも…置き時計とか小物なんかが、アンバランスな具合で至る所に鎮座していた。 多分コレらのファンシーな雑貨はきっと────… そこでガチャリと部屋のドアが開き、 オレは一気に現実へと引き戻されるのだった。

ともだちにシェアしよう!