9 / 54
8
(上原君…)
ようやく彼らを見つけた時。
上原君はぐったりとした綾ちゃんを、その腕に抱えていた。
少し離れた場所には、
地面で意識なく横たわる、傷だらけの芝崎君。
そして彼に泣きながら縋りつく…先程の女の子。
「ケンカ、したの…?」
芝崎君も上原君も、ボロボロになっていて。
僕は思わず上原君に駆け寄り、問い詰めたら───…
「お前には関係ねぇだろ…」
そう、冷たくあしらわれ…
上原君は綾ちゃんを背負って立ち上がった。
「カンケイ、ない…?」
(あるもんっ…キミの事なら全部、そうありたいよ…)
けど、言えるわけないよね。
綾ちゃんを背に、去っていく上原君。
わざわざこんな所にまで来て、
聞かなくてもいい拒絶を受けて、空回り。
己の浅はかな行動で、更に追い詰められるなんて。
何してんだろ…。
「佐藤…?」
ふたりを見るのが辛すぎて、キミを追い越し駆け出す。
擦れ違い様に、上原君に名前を呼ばれた。
嬉しいとか、喜んでいられる状況でもないのに。
やっぱり涙が出ちゃうんだ。
────────……
「またかよ…。」
「……ごめん。」
授業中の静かな校舎の屋上。
ひとり煙草を吹かしていた上原君に謝りつつも。
また隣に距離を取って、ちょこんと腰を下ろした。
彼は何も言わない。
「…ケガ……」
「あ?…んなの大したコトねぇよ。」
まだ傷だらけだったけど。
不良の上原君にとっては慣れっ子みたいで、本当に平気そうだった。
彼と芝崎君が喧嘩したのが2日前。
理由はやっぱり綾ちゃん。
あんなコトがあっても、未だに上原君は綾ちゃんの隣り。
芝崎君は昨日、休んでたみたいだったけど…
現状に変化は見られなかった。
上原君の心の中を、除いては…
「綾ちゃんに、伝えたの…?」
「………ああ。」
「そっ、か…。」
ギュッと膝を抱える。
苦しくて…胸に溜まったモノが、溢れてきちゃいそうだったから。
そのまま掛ける言葉も見つからず、黙っていたら…
「もう、フラれてっから…。」
そう低く呟いた声に、思い切り肩が跳ねた。
ポツリポツリと独り言みたいに、上原君が話してくれたのは…
2日前、あの日の出来事だった。
ともだちにシェアしよう!