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side. Tamotsu
「くそっ…暑ぃな…」
夏休みの電車内は、無駄に混んでいて。
クーラーが殆ど効かない中、ギュウギュウの寿司詰め状態。
そして僕は…
上原君とこれまでにない大接近を、強いられていた。
それでも下心アリアリな僕は、触れてしまう事に理性で以て抗い。必死になって踏ん張りながら、なんとか上原君にぶつからないようにはしていた。
その距離も10㎝を軽く切っており。
既に干上がってしまいそうです、僕…。
高校生の交通手段は、必然的に電車かバス。
何気に上原君は原付免許を持ってるみたいだけど、二人乗りは出来ないから今回は電車。
目的地の海は、電車で30分以上は掛かるから…
(ああっ、足つりそう…)
かれこれ20分くらい。
そろそろ足も限界だよ…。
「……………」
上なんて絶対に向けない。
だって上原君の呼吸音が聞こえるぐらい、近いのが判るから…。
俯いたまま、
後少し後少しって、なんとか耐えてたんだけど───…
「うあっ…!!」
急カーブに差し掛かった所で車体がぐらりと揺れ、
背後の人が僕へとぶつかってしまい。
…と同時に、前へと倒れる僕の身体────…
「危ねっ…」
トスンと行き着いたのは逞しい胸板で。
支えるように、自然と僕の頭に手が添えられた。
おでこには熱い吐息。
ホントに、熱い…
「わわっ、ごごっゴメンナサイっ…」
慌てて後ろに身を引いたら、今度は背中からぐらり。
「バカ、離れんじゃねぇよ。」
危ねぇだろと強く肩を掴まれ、また縮まった距離。
「でっ、でもっ…」
涙目で真っ赤になる僕。
どうしても、顔や態度にすぐ出しちゃうから。
ホント嫌になる…。
「………チッ……」
暫く無言で見つめられ、つい視線を泳がせたら。
(…わわわっ…!?)
更に身体を引かれ、
強制的に抱き締められる形にされてしまった。
「あっ…えっ…?」
くしゃりと乱雑に頭を胸に押さえつけられ、
抵抗出来なくなったら。
「いーから、くっついてろ。」
ぶっきらぼうに耳元で囁かれた。
「…うん……。」
ドクン、ドクン…
僕の異常な心音に混じって聞こえたのは、
上原君の音。
照れ屋さんだから、
もしかしたら彼も緊張しているのかもしれない。
(こんなコトされたら、困るよ…)
そう思いながら、こっそり上原君のシャツを握り締める。
彼の吐息、匂い、熱。
この距離が苦しくて、堪らなく愛おしい。
(あと、10分…)
出来ればずっとこのまま…とか、
そうしたら本当に心臓が壊れてしまいそうだけど。
今はそれでもいいから。
少しでもこうしていたいなって、思った。
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