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side. Tamotsu
「保、次は何がしたい?」
彼氏彼女みたいな擽ったいノリで、僕に主導権を委ねられ。う~ん…と店内を見渡す。
(あっ。)
そこでピタリと目に留まったのは、
仲睦まじくカップルが入って行った場所…であり。
「あっ、アレっ…アレが良い…!!」
「はぁ~…野郎ふたりは、さすがにキツくねぇか?」
────とか言ってもう入ってますよ…プリクラ機。
確かにここには、カップルか女の子のグループばっかりで。一番目立たない隅っこのヤツに、遠慮がちに入って来たわけだけども。
「えへへ…」
「…んだよ?」
「ん~ん、別に~。」
ついつい顔が緩んでしまうのは、仕方ない。
だって上原君とプリクラ撮れちゃうんだよ?
今なら、そこでイチャつきまくってるカップルの気持ちが、すっごく理解できちゃうよ、僕。
そんな訳で、あからさまに僕が舞い上がっていたものだから…
「…………」
じっと見つめてくる上原君の視線には、全く気付かないでいたのだ。
お金を入れて、音声に習って適当に操作して。
カウントが始まって身構えた途端、
「保。」
…って、ふいに呼ばれて──────
『カシャッ』
「なっ…ちょっ─────」
グイッと引っ張られたかと思いきや、
上原君が僕の頬に、ピッタリとその整った顔をくっつけてきて…
「ん?プリクラって、こうやって撮るんだろ?」
と、目線だけで隣りのプリクラ機を示す上原君。
そこには、これでもかってくらいに密着しながら。
大胆にも、チュー…とかしちゃってるラブラブカップルが、隙間からばっちりと見えてたもんだから。
「え、えっ…でもっっ、」
「ほら、次。」
『カシャッ。』
今度は後ろから、軽く抱き締める感じ。
その後も、まるで恋人同士みたいなモノばかり。
大接近した互いの姿が、小さな画面に写し出され…
(…これは…一生大事にしまっておこう…!)
こんなファンサービス…二度とないだろうから。
出来上がったばかりのプリクラを胸に、僕の心はウキウキと…天にも昇る勢いだった。
「はぁ~…いっぱい遊んだね~。」
気付けばもう18時を回り。
楽しい時間は、あっという間に過ぎてしまった。
「明日から学校かぁ…実感、湧かないね…。」
今までは母子家庭ってのもあって、高校では部活もやってなかったし。
夏休みは家の事ばかりで、いつも持て余していたけれど。
今年の夏休みは、今まででイチバン────…
多分これからもずっとイチバンの、
最高の夏休み…だった。
僕の想いは変わらず、一方通行のまんまだけど。
例え友達でも。
キミがこうして傍にいてくれるから…
それだけで充分、幸せなんだよ?
夏の夕刻はまだまだ明るくって。
もう少しくらい一緒にいられないかなって思うから…
確信犯で、帰りたくないオーラを全身で醸し出す。
我ながら女々しいなぁ。でもね…
そうすれば上原君は、とことん優しい人だから。
「…メシでも食ってくか?」
そう言って、こんな僕を甘えさせてくれるんだ。
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