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side. Tamotsu 「んっ…」 「保?」 目覚めると、僕は上原君におんぶされていた。 「もうすぐお前んちだぞ?」 「えっ?あ、うん……」 この状況は嬉しかったけれども。 やっぱり恥ずかしかったから下ろしてって、お願いしてみたら…『いやだ』の一言で断られてしまい。 仕方なく、けれどちゃっかりとその背に擦り寄って… お言葉に甘え、この身を委ねた。 トクン、トクン… 歩調に合わせ、上原君の音が心地好く耳を伝う。 「えっと…あの人達、は…?」 「ん?ああ…今頃は病院じゃね?」 「…そ、そっか……」 上原君の台詞に、僕が気を失ってた間の…お目にかかれなかった惨劇が、リアルに想像出来てしまい…。 ちょっとだけ彼らに同情しておいた。 …本音は9割スッキリしたけど。 (あ、怪我してる…) ほぼ無傷な感じだったけれど。 よく見れば、ちらほらとすり傷が刻まれていて…。 「ごめんね…」 僕の所為で、あの人達を怒らせちゃったから… そう思ってぽつりと謝罪を零したら。 「バーカ…」 って、すっごく優しい声で返されちゃった。 「歩けるか?」 「うん、平気。ありがと…。」 程なくして家の団地前まで到着し、ようやく下ろしてもらう。 夏休み最後になるであろう思い出が、 こんな形でぶち壊されちゃって。 楽しかったのに、なんか残念だなぁ…。 あんなヒドイ事言われて、平気なワケないよね? 心配なのと、中途半端な終わり方に名残惜しいのが重なって。 未練たらたらにじっと、上原君を見上げてると… 「ごめんな…。」 そう小さく告げ、上原君は僕に手を伸ばすと… 口元の、少し腫れてしまった箇所へと触れてくるから。 思わず跳ねる、僕の心臓。 「痛ぇか…?」 「う、ううんっ…」 言葉にならず首を横に振れば、更にやんわりと触れられて。僕は緊張で動けなくなり、黙ってされるがままになる。 「すげぇ驚いた…まさかお前がキレるなんて、さ。」 「だってあれはっ────…」 言いかけた言葉は、その指で遮られてしまう。 逸らせないその眼差しは、とても甘くて… 穏やかに、僕の心を包み込んだ。 「正直、嬉しかった。俺の為に殴られてまでよ…ありがとな。」 「そんな、僕は別に…」 ホントの事、言っただけだよ? 「保…」 本人に自覚はないんだろうけど。 大好きな人に、唇に触れられたまんま… こんな至近距離で、うっとり男前な微笑みを向けられるのは… かなり心臓に、悪いんだよ。 しかも名前まで囁やかれ、 顔がだんだんと近づ…───────え? (んンッ…――――!!?) 目を丸くして固まる僕。 すぐ目の前、距離にして0センチの所に… 上原君の綺麗な顔があっ、て。 僕の唇には上原君の柔らかな感触が、ちゅっと… くっついて、る…? 伏せられた瞳が、開きっぱなしの僕の目とぶつかり、 「目ぐらい閉じろよ、保…」 「ッ…────!!」 触れたまま囁かれ、もう一度わざとらしく音を立てて吸い付かれると… 上原君の唇は、ゆっくりと離れていった。 「コレは……今日のお礼、な?」 身動きひとつ、呼吸すら危うい僕に 「じゃあな」…と手を振り。 上原君は足早に街灯の向こう、闇の中へと消えていく。 「え……えぇっ…!?」 未だに状況を処理しきれない僕は、 ひとり取り残されオロオロするばかりで。 暫くの間、その場で立ち尽くすしかなかった。

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