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side. Akihito
「怪我…良くねぇのか?」
様子を見る限り、
明らかに仮病だと判っていたが。
ここで焦っても仕方ないからと、俺は慎重に言葉を紡ぐ。
「う、ううん…それは平気…」
嘘を吐かれると思ったが、
保は意外にもすんなり否定して。
結果的に、より気まずい沈黙へと陥るハメになった。
不良相手のタイマンとかなら、なんてことねぇのに。
俺はこういった雰囲気には、とことん弱く。
意を決しここまでやって来たものの、どうして良いのかが判らなくて。
歯痒くも、グシャグシャと頭を掻くしか術がない。
「そのっ…悪かったな。あんなコト、しちまって…」
保が俺を避けてる原因なんて、あの日のキスしかねぇだろうから…。場の空気に耐えかね、思わず自ら切り出し…謝罪を口にしたんだけど。
それを聞いた途端、膝を抱える保は。
露骨に顔を強ばらせると…背中を震わせ、俯いてしまった。
それでも俺は、バカのひとつ覚えみたいな台詞しか浮かばず。
更に保を、追い詰めてしまうことになる。
「どうかしてた…お前の気持ち知ってんのに、ノリであんなコト…」
「………でよ…」
「保…?」
顔は伏せたまま、
途切れ途切れに保の声が聞こえたかと思えば────
「謝らないでよっ…!!分かってるなら、なんで…僕がどれだけっ…」
向けられた顔は真っ赤になり、涙を流し激昂する保。
溜まりに溜まった感情が、
俺の軽率な一言を引き金に溢れ出し、
止まらない…
「お礼って何?謝るくらいなら、あんなキスなんかしないでよっ!キミが優しくする度、僕がどれだけドキドキして振り回されてるかっ…」
「……………」
「その気もないクセに、友達からなんて言わないで…さっさと切り捨ててくれれば良かったんだ!!」
「キミが僕を甘やかすからっ…キスなんてするから…」
前よりもっともっと、
好きになっちゃったじゃないか…
「たも、つ……」
取り乱し泣き叫ぶ保に手を伸ばしかけ、止める。
俺の行動全てが、保の身に重くのし掛かり、
苦しめてしまうのなら…
この手は伸ばしてはいけない。
触れる事など許されない。
「キミはどうかしてただけかもしれないよ?でも僕にはそんな気まぐれ、通用しないっ…」
だってだって、僕はキミが、
「好き、なんだからっ…!」
そう言って自ら俺の胸に縋り付く保。
向こうからの不意な接触に、心臓が馬鹿みたいに早鐘を打った。
思わず息を飲み、さっき仕舞い込んだ手を再度持ち上げると…
手探りで、ゆっくりと包み込む。
すると保は、ぴくんと小さく肩を揺らしながらも、
更に頭を強く擦り寄せてくると…
子どもみたいに声を上げ、泣き始めてしまった。
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