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第4話 心の闇
「え? ああ……血圧や体温を計って体調を管理したり、君といろいろ話をするのが僕の仕事だよ」
「俺にはあんたと話すことなんかないよ」
「君にはなくても僕の方にはたくさんあるよ。そうだね、まず涼一くんは18歳だよね。なのにウイスキーのグラスとコップがあるのはなんでかな?」
「そんなの飲んでたからに決まってるだろ」
「お酒は二十歳になってから。知らない?」
「うるさい。それくらい知ってるよ。馬鹿にすんな」
「分かってて、なんで飲むの?」
「リスカすると痛いから。お酒飲むと痛いのまぎれるし。痛いの苦手なんだよ」
「誰だって痛いのは苦手だよ」
「好きな奴もいるじゃん。結構あんたみたいな優しそうなイケメンがそういう趣味あんじゃないの?」
勇介の方を向いて二マリと笑う。
悔しいけど憎たらしい言葉を吐いてもどこまでも可憐なイメージは崩れない。
「僕にはそんな趣味はない……っと話が逸れたね。痛いのが苦手なのにリスカはやめられない?」
「うん」
「どうして?」
とりあえず聞いてみたが、初対面の人間にはそうそうと話さないだろうし、リスカは承認欲求の表れであることが多い。涼一は両親に振り向いてもらいたくてリスカを繰り返しているんだろう。
そんなふうに考えていたのだが、意外なことに涼一は手当された手首に視線を落として口を開いた。
「リスカをするとさ、自分の中の汚いものや醜いものが血と一緒に流れて行ってくれるような気がするんだ。だから」
「涼一くん……」
涼一の言葉に、勇介は彼の心の闇の深さを見たような気がした。
「でもね」
一瞬の間のあと、涼一は続けて言葉を重ねる。
「どんなにリスカしても、やなものが自分の中に残ってるような気がするときがあって。そのときはODで意識を騙すんだ」
「……」
勇介は返事の言葉が見つからなかった
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