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第7話 パニック
その日は涼一の前の患者が急にキャンセルになったので、いつもよりも早く涼一の家へ行くこととなった。
勇介の自惚れではなく、涼一は訪問看護が終わり、帰るときになると寂しそうな瞳をする。
だから少しでも早く涼一に会って、色んな話を聞いてやりたいと勇介は思っていた。
……でも、まだ完全に心を開いてくれてるわけじゃないんだけど。
それでもリスカやODをする頻度は目に見えて減っていたので、あと少し彼の心に寄り添うことができたら……。
そんなことをつらつらと考えながら、インターホンを鳴らし、いつもの不愛想な家政婦にドアを開けてもらい家の中に入った。
家政婦は勇介と入れ替わり仕事を終え、帰っていく。それがこの頃のルーティーンだ。
勇介はいつも通り二階の涼一の部屋をノックした。
「涼一くん、谷川だけど」
しかし、返事はなく部屋のドアが開く様子も見えない。
もしかして倒れてる!?
勇介の頭に初めて会ったときリスカしていた涼一の姿が蘇る。
「入るよ! 涼一くん!」
勢い込んで中に入るも涼一の姿はない。
「涼一くん!?」
勇介が誰もいない部屋で軽いパニックに陥っていると、奥にある扉が開いた。
今更だけど涼一の家は金持ちで、彼の部屋も一流ホテル並みのクオリティを誇っている。だから部屋にトイレもバスルームもついているわけで……。
結果から言うと奥にある扉はバスルームのもので、中から髪をガシガシ拭いながら一糸まとわぬ姿の涼一が出て来たのだった。
勇介と涼一の目と目が合う。
「うわっ」
悲鳴も仲良くはもった。
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