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第15話 ピュアハート
牛肉をたっぷり入れた野菜炒めに焼き魚に味噌汁にサラダ。
手際よくテーブルに並べられていく料理たちに涼一は目を丸くして驚いている。
「先生、料理作れるの?」
「作れるよ。味も自信ある。一人暮らしをしてると嫌でも得意になるって」
最後にお茶碗にたっぷりご飯を盛ってやり、涼一に食べるように促す。
涼一はおずおずといった形でまず野菜炒めに箸をつけ口に運ぶと顔を輝かせる。
「おいしい……!!」
「だろ? いっぱい食べるんだよ」
勇介が微笑んで見せると、涼一は何か聞きたげな様子を見せて来た。
「先生さー」
「んー?」
「モテるだろ?」
「モテないよ」
「嘘だ。先生みたいにイケメンで面倒見もいい男がモテないはずがないもん。俺、嘘は嫌いだよ」
涼一は怒ったように言い放ち、勇介は苦笑した。
「参ったな……うん。まあ、それなりにはモテるかな?」
「じゃ、こんなふうな料理を作ってくれる彼女とかいるの?」
「うーん……そりゃ俺ももうこの歳だし、過去には何人かそういう人はいたけど、今はいないよ」
「ふーん」
「第一君と結婚したのに彼女がいたら、不倫になっちゃうだろ」
「政略結婚でも?」
「政略結婚でも、不倫は不倫。そう言うのは好きじゃないよ、僕は」
勇介が涼一の目を見て言ってのけると、真っ赤になって俯いてしまう。
そんな様はまだまだ幼くてかわいい。
……まだ十八歳だもんな。ピュアっていうか。
そんなことを考えていると、涼一が消え入りそうな声で。
「……ありがとう」
「え?」
「……あの部屋から連れ出してくれて」
礼を言ってくる。
「どういたしまして」
返事をしながらも、この結婚は無駄じゃなかったと勇介は嬉しくなった。
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