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第19話 翌日

SIDE・RYOUICHI  鳥のさえずりの中、心地よい眠りから涼一が目覚めたとき、視界は真っ暗だった。  ……?  まだ半分寝ぼけた頭で考える。  ここ、どこ?  そして徐々に頭が覚醒していき、前日のことを思い出す。  あー……そうか、俺、訪問看護師の先生と政略結婚して、ここは先生の家で。  それから……?  やがて完全に目が覚め自分が勇介にぎゅっとしがみつくようにして眠っていたことに気づき、ぎょっとした。  視界が暗かったのは勇介の着ているパジャマの黒で、心地いい温もりは彼の腕の中のもの。 「うわわっ」  涼一が思わず声を上げると勇介が身じろいだ。 「……どうしたんだい? 涼一くん。トイレならあっち……」 「違うっ! どうしてこんな近くで寝てるんだよっ!?」  腕の中で暴れると、勇介がよいしょと涼一の体をずり上げ、視線を合わせて来て、 「新婚なんだから、くっついて眠らなきゃ」  なんて優しく、だが、どこか妖艶な笑みを浮かべる。  涼一は自分でも顔が赤くなるのが分かった。そして恐る恐る訊ねてみる。 「せんせ……俺たち……たの?」 「え? 何? 聞こえないよ」 「だからっ、俺たち、その、……したの?」  昨夜はお酒も飲んでないしODもしていない。パジャマもちゃんと着てるし。  意識ははっきりしていたはず……でも、このぴったりと脚を絡ませてくっついている二人の構図がどうしてもあらぬ想像をかきたててしまうのだ。  涼一の言葉に勇介は一瞬ポカンとした表情をしたあと、ふきだした。 「何もしてないよ。だいいち何かあったなら涼一くんの体がそれを覚えてるでしょ?」 「……っ……」  優しく諭され、かつ『体が覚えてる』なんていやらしいセリフを言われて、涼一は更に赤くなった。  し、しかたないじゃないか。  俺は誰かと一緒に寝たことなんてないし、ましてや『そういう行為』をしたことなんかないんだから。  心の中で毒づくも、 「いつの間にかくっついて眠っていたみたいだね。ベッドが狭いからごめんね」  勇介はどこまでも優しい。 「お詫びに美味しい朝ごはんを作ってあげる。涼一くんはこんな朝早くに起きて、ましてや食事なんて長いことしてないだろ? 顔を洗って待っておいで」  そうしてベッドからすらりとして長身が降り、キッチンの方へと向かって行く。  ベッドに半身を起こしたまま勇介の後姿を見つめていた涼一はなぜかすごく切ない気持ちになった。                

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