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第21話 選ばれた理由

 ……先生って、こんな無防備な子供っぽい笑顔を見せることもあるんだ……。  こんなのほんとに女の人にモテる要素しかないじゃないか。  なのに。 「……ねー先生」 「ん?」 「どうして、俺と結婚しようと思ったわけ? 先生なら男の俺なんかじゃなくても、たくさん女の人の相手がいたでしょ?」  涼一が聞くと、勇介はトマトをフォークで刺しながら答える。 「そうだね、あからさまに俺の立場に喰いついて来る女性はやだったし、純粋に俺のことを好きになってくれた相手は俺の立場を知ったら、どうしてかみんな離れて行くんだよ」 「そう、なんだ」 「それにね、君は僕と似てるから」 「似てる? 俺と先生が?」 「うん。孤独ってところがね」 「そんなの! 俺はともかく先生は孤独なんかじゃないじゃん! きっと友達だってたくさんいるだろうし、女の人だってきっとみんな先生が好きだし。……それに両親だって先生のことちゃんと認めてくれてるんだろ?」  涼一が自分とは違うと反発すると、勇介は呟いた。 「ずっと深い部分で孤独なんだよ」  そのときの表情があまりにも寂しそうで、涼一は言ったばかりの言葉に罪悪感を覚える。  それをごまかすように慌ててとりなす。 「ま、まあ。人間はみんな孤独な生き物だからな」  すると勇介は楽しそうな表情に戻り、 「涼一くん、哲学的なこと言うね。意外」 「うるさい。馬鹿にするな」 「別に馬鹿にしてないよ。……それとね、結婚相手に君を選んだのは他にも理由があるよ?」 「何!?」 「可愛いから」 「へ?」 「涼一くん。可愛いからさ」  甘い笑顔で言われて涼一は取り乱す。 「だっ、だから、そんな可愛いとか、女の子や子供に向かって言うようなこと言うな!!」 「だって、ほんとに君は可愛いから」  勇介は重ねて言うと、手を伸ばしてきて、涼一の口元についていたパン屑を取り、それを自分の口に運んだ。 「~~~~」  なっ、なんだ!? このバカップルか新婚夫婦みたいな……いや、実際新婚夫婦なんだけど。でも……。  顔が熱くなりまた真っ赤になる涼一とクスクス笑う勇介。  その光景は第三者が見たらまさしく新婚のそれのようだろう。  涼一は複雑な気持ちだった。  政略結婚のはずなのに……なんで、こんな甘ったるいんだよ?

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