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第32話 片思い
SIDE.YUUSUKE
「涼一……可愛い……好きだよ」
心の奥から湧き出て来る涼一への愛おしさに口を突いた言葉と同時に、勇介は彼の中へと射精した。
訪問看護師として忙しく走り回る暮らしはストイックさを勇介に強いていたようで、その吐精の量は自分でも驚くほどだった。
さっきトイレで処理したばかりだというのに……。
涼一が可愛くて。愛しくて。
そんな相手とのセックスはすごい大きな興奮を勇介に与えたようだった。
柔らかな頬に快楽の涙の跡を残し深い眠りへとつく涼一を見つめ、勇介はなんとも複雑な気持ちでいた。
何にも知らない自分の歳の半分の年齢の少年に手を出したことへの罪悪感めいた気持ちも勿論あった。
だが、それよりも勇介を苦しめていたのは、いつかきっと涼一は自分の腕の中から飛び出してしまうだろうということ。
……なんといってもまだ十代だもんな。
そう早い話がいくらこちらが本気で好きになっても、しょせん片思いで終わるだろう恋。
無邪気で可愛くて、でも闇を抱える少年にいつの間にか心を射抜かれていた。
愛し始めていたんじゃなくて、もう戻れないくらい愛していたんだと気づいた。
「仕方ないな……」
政略結婚とは言え今は自分の妻という立場の涼一。
いつかその立場から自分の道へと歩き出すまではまだもう少し時間があるだろう。
それまでは――。
嫌って言うほど愛してあげよう。
闇を抱えるというのなら俺が照らしてあげたい。
寂しいというなら、いつも傍にいてあげるから。
だから。
この命捧げてもいいから、一分一秒でも多く『妻』でいて。
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