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第41話 嵐の前

「……はい。なんだよ、父さん、朝っぱらから。仕事ならUSBに入れて送るってラインしただろ? ……え? 何言って……ちょっと待ってくれよ、そんな。 え? もうこっちに向かってる? そんなの困るよ、俺にも予定が――――おい、父さん? ……切れちまった」  父親からの電話は一方的に切れてしまった。思わず天を仰ぐ勇介。  困ったことになってしまった……。  勇介が考え込んでいると、隣で涼一が心配そうに聞いて来る。 「どうしたの? 勇介さん、電話、お父さんからだったの?」 「あ、ああ。もうすぐここへやって来る」 「何しに?」  不安そうな涼一の肩を勇介は掴むと、言った。 「涼一、これから父さんが一人客を連れてやって来るけど、おまえは俺が絶対に守るから、何を言われても気にするなよ……分かったな?」 「わ、分かったけど……」 「とにかく服着て」  勇介は涼一に服を投げると、自分も衣服を身に着け始めた。  二人が身支度ができたちょうど、そのときインターホンの音が鳴った。  勇介がカギを開けると、父親が一人の女性を伴い立っていた。 「なんだ? 今日は訪問看護の仕事はどうした?」  父親が玄関で靴を脱ぎながら聞いて来る。 「……今日は休み。涼一の体調がよくないんでね」  そんなウソをついたのはできればこのまま帰って欲しかったからなのだが。 「それはよくないな。ケーキを買って来たけど、涼一くんは食べれるかな」  父親はどうしても『あの話』をしないで帰るつもりはなさそうだ。  女性を伴いずけずけと部屋の中に入って来る父親は、ベッドの端で怯えたように小さくなっている涼一に声をかけた。 「……久しぶりだね。体調が悪いとか。無理しないで寝ていてもいいんだよ」  優しい声だが、暗に涼一には『あの話』は関係ないと言わんばかりである。  勇介も聞かせるべきか聞かせないでおくべきか迷ったのだが、涼一は自分の妻である。それに、遅かれ早かれ聞くことになる話だ。  勇介は涼一を呼んだ。 「こっちへおいで、涼一。大切な話があるらしいから」

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