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第45話 年の差
マンションの部屋へ戻って来ると、勇介は涼一をベッドに運び、寝かせた。
精神安定剤の効き目の所為か、それとも精神的に疲れ切っていた所為か、すぐに眠りに落ちた。
まだまだ幼さの残る寝顔をしばらく見つめてから、勇介はキッチンに立った。
何か食べさせなきゃな……お粥とか、そういうものがいいだろう。
「……勇介さん……」
お粥が出来上がった頃、涼一は目を覚ましたのかキッチンに立つ勇介の傍にやって来た。
「……ああ、涼一、起きたんだ。ちょうど今お粥ができたよ。食べるだろ?」
「お腹空いてない……」
「それでも食べなきゃだめだよ、ただでさえ華奢なのに。ほら、俺も一緒に食べるから」
勇介がそう言うとようやく涼一は首を縦に振った。
ダイニングのテーブルで二人向かい合ってお粥を食べる。猫舌の涼一は一さじ一さじゆっくりと冷ましながら食べている。その様子がなんだか小動物のように可愛くて、こんなときなのに思わず微かに笑みが零れる。それに気づいた涼一が、訊ねて来る。
「なに?」
「いや。涼一ってほんと可愛いなって思って」
勇介の言葉に涼一は頬を少し赤く染めながらも反発してくる。
「子ども扱いしないでよ。俺は男なんだから……!」
「そんなことはよーく分かってるよ。でも可愛いものは可愛いから」
「……そんな言葉は女の人に言ってあげれば? 例えば今日来たあの女の人とかに」
「涼一……」
勇介はため息とともに言葉を紡いだ。
「はっきり言っておくけど、俺はあの女性と結婚する気も子供を作る気もないよ。何度も言うけど、俺の妻は涼一おまえだけだから」
涼一さえ望んでくれたら、俺は会社も親も捨てて君とどこかへ逃げるのに。
でも、その言葉は涼一には言えない……十八歳の彼には重すぎる気持ちだと思うから。
俺はもう三十半ばを過ぎ、やりたいこともそれなりにして来たけど、涼一はまだまだこれからの少年だ。
散々手を出しておきながら今更かもしれないが、涼一がこの腕から飛び立つというならとめることは俺にはできないから。
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