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第3話

 俺たちの関係が決定的に変化したのは高校に進学して半年ほど経った時だった。  その日は夏の定期考査が終了し、終業式を待つまでのテスト明け休みだった。夏休みを目前に控え、浮かれ切った俺たちは新発売のゲームを一緒にプレイしようと明の部屋に集まった。    明の部屋に入った瞬間、俺はその違和感に気づいた。 「明って香水なんか付けてたか?」  それは残り香のようなかすかに甘ったるい匂いだった。先ほどまで一緒にいた時には気づかなかったから、俺は何となく気になったのだ。 「――あぁ……まあ、ね」  明は肩にかけていたリュックを下ろしながらはぐらかすように言いよどんだ。  その意味をあまり理解していなかった俺は、内心では「一丁前に香水なんか付けやがって」と毒づきつつも、特に気に留めようとはしなかった。それよりも新作のゲームのことが頭から離れなかったのだ。  だから、俺に背を向けた明がどんな顔をしていたのかも知りようがなかった。 「ふーん、それよか早くゲームやろうぜ。テスト期間中ずっとやりたくてうずうずしてたんだ」  俺が期待に胸を膨らませながら購入したソフトを取り出すと、明がこちらを振り返ってわくわくした顔で「うん」と頷いた。

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