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第4話
「隙あり!」
「おいっ、それ反則――……!」
一瞬の隙をついて俺の操作するキャラクターが明によって倒される。戦闘画面が結果画面に切り替わり俺のキャラクターの前には「YOU LOSE」と負けを知らせる表示が流れていた。
「はー! まじでムカつく!!」
俺はコントローラーを背後のベッドの上に投げ出して頭をぐしゃぐしゃにかきむしった。
久しぶりに発売されたそのゲームソフトは俺たちが子供のころから遊んでいる対戦ゲームの続編だった。幼いころから何度も二人で対戦して、時には現実世界で殴り合いの喧嘩に発展したこともあるぐらい俺たちはそのシリーズが大好きだった。
「臣 はいい加減あのキャラ向いてないから、やめたほうがいいって」
「いやいや、俺はドンキーで貫くって決めてんの」
明は拗ねた俺を見てあきれたように笑いながら、ふうっと伸びをして身体を背後のベッドに預けた。
「ちょっと休もうよ、三時間ぶっ通しはさすがに疲れた」
そう言われて俺はテレビの上にある時計を見ると短針は四時ごろを指していた。ゲームに熱中しているうちに結構時間が経っていたらしい。
「そうだな、ちょっとトイレ行ってくるわ」
「ん」
俺はベッドに手を置いて立ち上がった。ついでにベッドに投げ出していたスマホを取ろうと、ベッドの縁に寄りかかっていた彼の頭上辺りまで身を乗り出した。
ふと何気なく、背後から彼の胸元に目が行った。
そして「それ」を見た俺はそのまま硬直した。
「……明」
俺が呆然としたように声をかけると明は「なに?」と振り返った。頭を後ろに傾けながらこちらを向いたせいで、第一ボタンまで開けられたシャツの襟元には先ほどよりも大きな空間が生まれた。
その瞬間、「それ」は俺の目に、はっきりと飛び込んできた。
「っ――……」
明の着ているシャツの下から覗く、彼の肌に付けられた赤い跡――…
それと同時に俺は最初に部屋に入った時に感じたかすかな残り香の「意味」を理解した。
俺は、無意識に明の胸元に手を伸ばした。シャツの襟元を指でひっかけて、その跡がより見えるように指をくいっと引く。
「おまえ、ヤッたんだ?」
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