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第6話

「俺にも教えろよ」  俺の体は自然に動いていた。明の履いているスラックスのベルトを引き抜くと彼の体を横向きにする。そして両腕をねじるようにして後ろに持っていくと手にしたベルトで明の手首を拘束した。 「ちょ、待って! なにすんだよっ」  うつ伏せにされた明から焦ったような声が上がる。腕を必死に動かして拘束から逃れようとするが強く締め付けたせいでびくともしないようだ。 「おい、臣! おまえおかしいよっ……なんでこんなこと……っ」  明は俺を説得するように声を荒げる。俺は無言のまま明の肩を押して再び彼を仰向けにすると彼の着ているシャツのボタンに手をかけた。  そして彼に今から行われる「行為」の意味を分からせるように、一つ一つゆっくりとボタンを外していく。 「な…に……」  明のシャツのボタンをすべて外した俺は左右に開いて隠されていた肌を露わにした。  久しぶりに見る明の身体は相変わらず透き通ったように白かった。染みひとつない陶器のような肌には、まるで広大な積雪の中につけられた一つの靴跡のように赤い痕跡が残されていた。  「それ」は付けられてから少し時間が経っているのか、うっすらと青く変色している。 ――汚い。  俺はその跡を見てはっきりと感じた。沸き起こった衝動に任せるままに身をかがめてその跡に顔を寄せていく。 「臣っ……⁉ んっ……」  変色した跡を覆うように唇をかぶせて、わざと音を立てるように強く吸い上げた。ちゅっ、という音が静かな部屋に響く。  明の肌に触れたことはあるものの、口づけたのはもちろん初めてだった。俺は時折甘噛みのように歯を立てながら、何度も何度もその柔らかい肌に吸い付いた。 「あっ……うっ……」  明の身体は俺がその柔肌(やわはだ)を吸い上げるたびにぴくりと震えた。それだけで小さく声を漏らすなんて、彼の身体はずいぶんと敏感なようだ。  俺はつけられた跡を覆うように彼をマーキングすると、周りの部分にもちゅっ、ちゅっと吸い付いた。 「んっ……臣っ……ぁ」  明の肌をひとしきり堪能した俺は名残惜しに柔肌をべろりと舐め上げて身を起こした。夢中で喰らいついていたそこは唾液でてらてらと光り、最初に付けられていた痕跡など一切わからない程に鮮やかな赤色が広がっていた。  バラの花びらのように点々と色づくそこには吸い跡だけではなくうっすらと歯型も浮かび上がっている。  顔を上げて明の顔を見ると、泣きはらした顔でぼんやりとこちらを見る瞳があった。それを見て、自然と嗤いがこみ上げる。 「女も男も変わんねえよな。俺にも挿入する(いれる)気持ちよさ、教えろよな」

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