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【3】

その後は家に行く時間を決め、家の場所はメールするからと言う木月とメルアドを交換して別れた。 家に着き、俺はいつメールが来ても気づけるようスマホを近くに置いて夕飯の支度を始めた。 「ただいまー」 夕飯が完成間近になった頃兄貴が帰って来た。メールはまだ来ていない。 「おかえり。ちょうど飯出来たから皿運んで。母さんは?」 「母さん今日も残業で二十一時ごろになるから先に夕飯食べててってさっきメールきた。今日の夕飯なに?」 「唐揚げ。……じゃあ母さんの分は違う皿に入れとくわ」 ふたりで夕飯を食べ始めると「響、お前なんか良いことでもあった?」と聞かれた。 「え、なんで?」 「なんか、嬉しいことがありましたオーラが出てるっていうか、鼻歌でも歌い出しそうな雰囲気だからさ」 兄貴は俺より三つ上の大学二年生で、俺と同じゲイで、俺と違って恋人がいる。 「いや、大したことじゃないんだけど……その、クラスに気になる奴がいて今日初めてまともに話せたもんでちょっと嬉しくて…」 話しているうちにだんだん恥ずかしくなってきて最後のほうはごにょごにょと小声になってしまったが、兄貴は「へえ、そりゃ良かったなあ」と自分のことのように嬉しそうに聞いてくれた。 それを見てこんな話は兄貴が同じ男でどんな話でも聞いてくれる人で、何より同じゲイだとわかっているから話せるんだよなとしみじみ感じた。 同じ家族でも母さんには言えないし。 「兄貴はどうなんだよ、貴文さんと。もう付き合って二年以上だろ」 「どうも何も、円満だけど?」 当たり前のようにドヤ顔で幸せ宣言されて若干イラっとした。 「で、お前のその気になるクラスメイトくんってどんな奴?」 「どうって……格好良い顔してると思う、女子が色々噂してるし」 「へえ、服装とか見た目も派手なわけ?」 「いや、別に服装は制服だし派手さはないけど…茶髪だし、すごい小さいけどピアスもしてる。うちの学校校則ゆるいしそういうことしても違反じゃないから」 「ふーん、普段からよく見てるんだな。そのクラスメイトくんのこと。ピアスなんてジャラジャラつけてない限りそうそう気付かないだろ」 「…………いや、別にそんなにじっとは見てないし、他にも気づいてる人いるんじゃねーの。それに俺は兄貴達みたいにそいつとどうこうなりたいとか思ってないし」 赤くなった顔を冷ますように俺は麦茶を一気飲みし、ご馳走様と言って席を立った。

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