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【7】
「お次の方、ご注文をどうぞ」
「一ノ瀬、どれにする?」
「えーっと……じゃあチョコ……」
木月が店員に「バニラとチョコひとつずつください」と頼み会計を済ませてくれるのを俺は横でぼんやりと見た。
本当に奢って欲しかったわけじゃないのにこんな金ばっか出してもらっていいのかと申し訳なくなってくる。
店員からアイスを受け取り、ふたりで外のテラスに座る。
「ここのアイス初めて食べたけどやっぱり評判良いだけあって美味いな」
「ああ……ありがとう、奢ってくれて」
アイスはチョコが濃厚ですごく美味しかった。
礼なんだし気にすんな、と木月は綺麗な顔で笑う。
「……こんな洒落た店、本当はデートとかで来る場所なんだろうな」
会計中、木月のことを顔を赤らめて見ていた女性の店員を思い出しながら俺は言った。
「残念だけど、俺にはデートしてくれる相手なんていないから」
「いないの?付き合ってるやつ」
「いないよ。今までも誰とも付き合ったことないし」
俺なんかと違って経験豊富だろうと勝手に思っていたから、今までもないという言葉に驚いた。
「でも実際モテるだろ?お前の話女子がよくしてるし。いいなって思った人とか今までいなかったのか?」
「……まあ今まで何回か告白されたことはあるけど、その中に良いと思う人はいなかったな。好きな人いるし、俺」
『好きな人がいる』……あまりにもさらっと言われて聞き流しそうになった。
数秒後言葉の意味を理解して思わず「え!?」と大きな声が出てしまった。
「え、好きなやついんの……!?」
いるよ、と木月は特に照れたような様子もなくすんなりと頷いた。
頭をガツンと殴られたような衝撃だった。
「でも絶対に付き合えないと思うけどね」
なんで、と尋ねたが木月はこの問いには微笑むだけで答えなかった。
どんなやつ?同じ学校?彼氏持ちの女の子とか?それとも俺らみたいなガキなんて相手にしないような大人の女性?いつから好きなの?
聞きたいことは山ほどあったがどれも言葉にならず、さっきまであんなに美味しかったアイスは何も味を感じなくなっていた。
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