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【9】

「響、おはよー……お前顔死んでるけど大丈夫か」 登校すると前の席のタクヤが心配そうに言ってくれたが、力なく「………はよ」と返す元気しかなかった。 「……英語の課題が終わらなくて徹夜してたんだよ」 「あー、確かあれ今日提出だっけ?もっと余裕をもってやっとけよ」 「今度からはそうする……」 一睡も出来なかった理由を言えるわけもなく適当に誤魔化した。 「木月くん、ちょっと良いかな、ここ教えて欲しいんだけど……」 木月、という名前に反応して声のほうを見るとクラス委員の二宮さんが参考書を持って木月に話しかけていた。 「良いよ、どれ?」 「この問題なんだけど……」 なんか必要以上に二宮さん距離近くね…? ふたりのやりとりをもやもやしながら見ていると「おい響、響ってば」とタクヤに声をかけられた。慌てて「ごめん、なに?」とタクヤのほうに顔を戻す。 「だから、来週の調理実習の買い出しいつ行くって聞いてんじゃん。俺ら買い出し係だろ」 「あ、ああ……。いつでも空いてるけど」 「じゃあ木曜の放課後でもいいか?俺木曜しか部活の休みないから」 頷くと「じゃあ決まりだな。……ってか今何を見てたんだよ」と言ってタクヤは俺が見てたほうを振り向いた。 そして木月と二宮さんが勉強していることに気づくとニヤニヤして「なに、お前二宮さん狙いなの?」と小声で聞いてきた。 いや全く、と全否定したかったがじゃあ何を見てたんだと追求されても困る。 「別に。朝から勉強なんてすげえなと思っただけ」 「なんだ、つまんねーの。まああの二人学年トップだもんな」 それに美男美女で並んでるとお似合いだよな、というタクヤの一言にドキッとする。 「……二宮さんって確か他校に彼氏がいるって噂なかったっけ」 「あー、あの有名な噂な。なんか別れた?らしいよ。俺も詳しく知らないけど。ってかお前やっぱり二宮さん狙ってんの?」 違う、と言っても普段女子の話なんてしない俺の口から女子の名前が出たことが面白いらしく、それからしばらくタクヤには二宮さん狙いかと聞かれ続けた。

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